音楽嗜好症 オリヴァー・サックス著/大田直子訳
鼻をソの音でかむ、風がレの音で吹く、時計はシのフラットで鳴る……。絶対音感を持って生まれた人には、この程度の認知はなんの造作もない。彼らのほとんどは、可聴範囲の70以上の音階を特定できるという。これは本書で紹介される、人と音楽にまつわる不思議さのほんの一例だ。
そもそも人はなぜ音楽を好きになるのか、「ノーミュージック、ノーライフ」というほどにのめり込む人が出るのか。脳神経科医が解明してみせる。
「人間の脳に単一の音楽センターは存在せず、脳全体に散在するたくさんのネットワークが関与している」だけに、謎解きは一筋縄ではいかない。突発性音楽嗜好症、失音楽症、さらには音楽療法にも踏み込んで、事例豊富にエッセーは展開する。
著者は医師であると同時に、『レナードの朝』『妻を帽子とまちがえた男』などで知られるエッセイストの顔も持つ。11作目で新たな境地を開いたようだ。
早川書房 2625円
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