3Dの時代 渡辺昌宏/深野暁雄著 ~2010年は3D元年 謳歌するのは中高年?
3D映像が世間で再び注目されるようになったのは、2009年公開の映画『アバター』の成功による。3D元年といわれる2010年を起点に、過去、現在、未来を俯瞰するのが本書の骨子である。
幕末明治の写真家、江南信國(T. Enamiとして、海外でより著名らしい)が撮影したステレオ写真が日本文化を立体化して紹介した3Dの嚆矢(こうし)である、と日本における3Dの歴史を説き起こし、現在では3D映画やCMにとどまらず、その用途がAR(拡張現実)やCG、GPS(位置情報)にまで広がっている状況を詳しく説明する。インターネットとの関連では05年にキーホール社が開発した3D地球儀がGoogle Earthと名を変え、認知されていることやP・ローズデールによって開発された「セカンドライフ」の繁盛に触れる。
こうした3Dの発展の背景には、ムーアの法則(トランジスターの集積密度は18カ月ごとに倍増する)として知られるCPU(中央処理装置)の技術革新やGPU(映像処理装置)の発展と、ギルダーの法則(ネットワーク帯域は6カ月で倍増する)に体言される高速大容量の通信技術の発展が寄与していると明かす。
将来の明るい展望としては、内視鏡手術の普及、月や火星など地球外からの映像受信、歴史遺産の復元などでの利用のほか、観光・不動産・教育分野でのAR活用などを挙げる。一方、課題として3D映像酔い対策、著作権と個人情報保護、ネット上の仮想現実と実際を区
別しない新しい世代へ対応な
どを具体例とともに示している。
それにしても3DやARをより謳歌できるのが、幼少時に実際の野山を駆け回った中高年だろうという指摘は面白い。
わたなべ・まさひろ
サイメン3Dプロデューサー。メタバース協会理事。1965年生まれ。IT関連イベント・セミナーの企画主催などを手掛ける。
ふかの・あきお
神奈川工科大学情報学部情報メディア学科客員教授。1965年生まれ。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士課程在学中。
岩波書店 2310円 177ページ
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