つまり大臣はオスプレイもAW609も共にティルト・ローター機の候補だとして、そこに問題はないとしている。
こんな子供だましは諸外国では通用しない。しかも「軍事の専門家ではございません」という逃げは、いかがなものだろうか。確かに大臣は軍人ではないだろうが、大臣は専門家に補佐され決断を下しているはずだ。政治家は「専門家」である官僚や制服組に「騙されない」見識が必要で、官僚や制服組よりも高い見地から物事を判断することが仕事のはずだ。有事ともなれば自衛隊の指揮を執る立場にある。揚げ足取りをするつもりはないが、その人が「軍事は素人ですから」と逃げを打つのは当事者能力の欠除だろう。そもそもこの件に関して、大層な「軍事的知識」は必要ない。
AW609の実用化は2017年
オスプレイとAW609は、「可動式ローターが付いている」という点は確かに同じだが、まったく異なる機体だ。AW609 は軍事用ではなく、民間用のビジネス機なのである。
大きさもまったく違う。AW609は機体の規模が3分の1程度。AW609を軍用の戦術輸送機として使用する場合、多くの改造が必要である。本当にAW609 を候補に入れたのであれば、砂利を運ぶためにダンプカーを調達しようという時に、軽のワゴン車も候補に入れるようなものである。
もし、そのような土建屋の社長がいたならば、会社は倒産の憂き目にあってしまうだろう。
そもそもAW609は開発中の機体であり、実用化は2017年と見込まれている。そこから更に軍用型を開発する必要がある。この開発には数年はかかるだろう。また同機は既に注文を抱えており、防衛省が仮に発注してもすぐに製造してくれるわけではない。つまり、まずは開発費を計上する必要があり、防衛省は来年度の予算で発注はできない。防衛省は来年度の予算で量産機を発注する予定であり、その点からもナンセンスだ。
ところが江渡防衛大臣は24日の定例記者会見で筆者の質問に対し、AW609がティルト・ローター機の候補であることに問題は無いと答えたのである。
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