広がるリコール、タカタの甘い認識 欠陥エアバッグは政治問題化

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タカタ本社が入居するオフィスビル。追加費用拡大なら窮地に

実のところ、トヨタとNHTSAが今回発表した中でまったくの新規案件はごくわずかでしかない。日産のリコールは従来の引き当てに含まれていないが、追加費用は限られている。タカタは21日と22日にリリースで「すでに引当金に繰り入れ済みであり、新たな費用発生はごく一部である」と強調したが、現時点でタカタの主張は間違いではない。だが、前述のように株式市場は先行きに疑念を強めている。

「リコール対象が飛躍的に広がる可能性が出てきた。タカタの認識は甘いのではないか」とクレディ・スイス証券の秋田昌洋アナリストは警告する。これまでのリコールは、00年から02年9月にタカタのメキシコ工場で作られた部品が対象だった。03年から07年製造の部品でも、高温多湿な地域で長期間使用された場合に不具合が発生している。この問題では従来、メキシコ湾岸の一部地域に限って自主回収やリコールが行われていたが、対象地域がジリジリと拡大しているのだ。

米国では集団訴訟の動きも

「特別に高温多湿な地域だけの問題」とタカタは主張するが、本来、自由に移動できる自動車で地域限定のリコールはほとんど例を見ない。危険性が高ければ、地域に関わらずリコールするのが筋だ。であるならば、全米、全世界でリコールとなる可能性は無視できない。

一番の問題は、タカタに対する不信感の広がりだ。すでに米メディアの批判報道は過熱しており、米議会でも取り上げられた。集団訴訟の動きもある。

米国で報じられているタカタ製エアバッグによる事故が、すべてタカタ製部品の欠陥が原因かはまだわからない。トヨタの品質問題では“意図せぬ急発進”のほとんどは後にアクセルの誤操作と結論づけられた。だが、いったん、危ないというレッテルを張られてしまえば、それを払しょくするのは難しい。タカタが窮地に追い込まれている。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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