野球「独立リーグ」に経営者が続々と挑む背景事情 全国に30の球団、「淘汰の時代」に入りつつある

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このコラムで何度も指摘してきたが、独立リーグに欠落しているのは「ステイタス」「社会的信用」だ。地域の人は「あのチームは“プロ野球”を名乗っているが、実力はどんなものだ?」という懐疑的な視線を向けている。NPBに人材を送り出すことによって、地域における信用は高まり、スポンサー獲得や観客動員にも良い影響があるのだ。

また、NPBに人材を多く輩出する球団には、アマチュア球界から良い人材が集まるようになる。四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスは、今年まで9年連続でNPBに人材を送り込んでいる。西武の岸潤一郎のように一軍で活躍する選手も出たことで、徳島には「NPBに行くために」入団する選手が出るようになった。

そういう前例もあって新規参入した独立リーグ球団の多くも「プロに行ける人材の確保」を重要視している。

企業が抱える「会社チーム」は減少

独立リーグが変動している背景には「社会人野球の長期低落傾向」がある。社会人野球連盟に加盟するチーム数は2013年には342、2021年は346と横ばいだが、企業が抱える「会社チーム」は196から97に減り、「クラブチーム」が146から249に増えている。

企業の正社員として給料を得ながら野球をする「会社チーム」の選手は減少し、他に仕事を持ちながら野球をして大会に参加する「クラブチーム」が増加している。独立リーグと大差ない待遇のクラブチームも多い。しかも社会人は高卒なら3年間、大卒でも2年間はプロ野球のドラフト指名にかからない。さらに「育成ドラフト」での指名もない。

社会人を経てプロ入りを目指していた選手の中には、独立リーグに進路を切り替える選手が増えているのだ。

火の国サラマンダーズの前身は、社会人野球の熊本ゴールデンラークスだった。オーナーの田中敏弘氏は、熊本での野球振興を推進するためにはプロ化が必須と決断し、熊本ゴールデンラークスを火の国サラマンダーズにするとともに、九州アジアプロ野球機構を創設し、代表理事に就任した。これも社会人野球と独立リーグの位置関係の変化を象徴する一例だろう。

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