わが子の「受験失敗」親のあなたこそ試されている 「次の一歩を」の働きかけなどはむしろ不要

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(2)「間違いがなければ学びはなく、失敗がなければ成功はない」と考える

ある時点の失敗や間違いという「点」が、その後の人生のある地点の成功という「点」を作り、それが「線」でつながっていたというケースはしばしばあります。あのときの試練があったから、今の自分があるという意味です。

確かに試練、失敗、間違いは避けたいものです。自ら積極的にそれらを経験する必要はありませんが、努力した結果、そのようなことになった場合、先にある「成功」「喜び」につながることは現実に起こります。

すべてがつながっていると明確に証明することはできませんが、起業家、ビジネスマン、アスリート、アーティスト、発明家などの人生ストーリーを知れば、点と点はつながり線になっていたという共通点を見出すこともできます。

これは人生をある程度歩んできた人でなければ、実感できません。12歳の子どもには到底わからないことです。しかし、大人である親は、これまでの人生を振り返って、そのような経験があるかもしれません。その場合は、やがてやってくる未来の子どもの姿を長い目で見守ってあげてください。

子どもには子どもの人生、親には親の人生がある

(3)親の意識を別に振り向ける

さて、最後の項目は直接的な親の感情のコントロールです。これまで全力で親も子も受験に向かい、日々の生活時間の大半を費やしてきただけに、感情をそう簡単に、切り替えることができないでしょう。

意に沿わない結果の場合はなおさらです。そのため、意識がどうしても過去に引きずられる傾向にあります。

その場合、親の意識を別のことに振り替えていく必要があります。別と言っても、今後の子どもの勉強や進路関係ではありません。自分の仕事や自分のやりたいことに意識を向けていきます。つまり、別のことで忙しい状態を作り出していきます。

人は、いっときに2つのことを同時に考えることも、実行することもできないため、別のことに意識を向けてしまえば、子どもの現状に対する不安感は減っていきます。

子どもには子どもの人生があり、親には親の人生があります。親が自分の時間、人生の大半を子どもに捧げることは悪くありませんが、子どもの側から見ると、「親が日々楽しく生きている姿を見るほうが圧倒的に良い影響を与える」ということがあります。

以上、3つの視点についてお話ししてきました。もちろん、これらを聞いてすぐに、切り替えができるほど人間の心は単純ではありません。最後は「時」が解決してくれますが、少しでも気持ちがリセットできる方向に進んでいただければ幸いです。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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