世界でも絶滅危惧種?「パタパタ」表示機の奥深さ 京急最後の1台撤去、実はイタリア発祥のメカ

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日本国内の空港では、未だ「パタパタ」が現役というところもある。その1つは函館空港の出発ロビーだ。同空港の主要乗り入れ航空会社である北海道エアシステム(HAC)の取材を通じて同空港との関係が深い航空アナリストの北島幸司氏に話を聞いてもらった。

函館空港の反転フラップ式案内表示板(写真:北島幸司)

同空港で広報役を担う吉川菫(すみれ)さんは、「京急川崎駅での撤去が決まって以来、お客様やメディア様からの問い合わせが急速に増えました。でも、こちらのパタパタは全て現役で撤去の予定はありません」と話す。「次にパタパタするのはいつですか?」とわざわざ案内所に聞きに来る人もいるといい、関心が高まっていることを物語っている。ただ、頻繁に列車が発着する鉄道駅と違い、空港では表示が変化する回数が少ないのが玉にきずだ。

「交換部品の入手が難しい」という悩みは世界的にどこでも同じだが、函館では「不具合は滅多にない」としながらも、「交換部品の生産が終わっているので、故障が心配」(吉川さん)といい、故障時の修理というリスクもあるようだ。

いつまでもあると思ったら…

現在は使われていなくても、昔のボードの雰囲気を残した保存の例としてかつての名古屋空港(愛知県豊山町)の国際線ターミナルビルがある。現在はショッピングセンターとなっているが、チェックインカウンターだったユニットの一角に「パタパタ」を模したボードがある。

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通勤・通学で毎日、駅を使っている人にとっては表示板をじっくり眺めている暇などないだろう。だが、日ごろ見慣れているものにもさまざまな歴史がある。「いつまでもある」と思っていても、いつの間にか姿を消してしまうこともあるわけだ。

京急川崎駅ホームにあった「パタパタ」はなくなってしまったが、今回の引退をもって日本から全て消えてしまうわけではない。近くの駅、あるいは旅先でそんな表示板を見つけたら、「パタパタの動きや音」をぜひ記憶にとどめておきたい。

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さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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