世界でも絶滅危惧種?「パタパタ」表示機の奥深さ 京急最後の1台撤去、実はイタリア発祥のメカ

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欧州でも「パタパタ」はLEDや液晶表示に置き換えられ、見る機会はめっきり減っている。

旧東ベルリンのベルリン中央(現・ベルリン東)駅の発車案内。1988年時点でフラップ式ではなかった(筆者撮影)

1980年代後半から2000年代初めにかけて撮影した写真を基に確認すると、例えばドーバー海峡をくぐる国際特急「ユーロスター」がかつて乗り入れていたロンドン・ウォータールー・インターナショナル駅で1999年に撮影した写真では、すでに発車案内がLED表示となっていた。これに対し、ユーロスターのロンドン乗り入れ開始前まで、鉄道連絡船によるフランスへの旅の起点だったビクトリア駅では少なくとも1990年代まで「パタパタ」が使われていた。一方、旧東ベルリン側のベルリン中央駅(現在のベルリン東駅)は1988年の時点でフラップ式ではなく、マグサイン(flip-disc display)の仕組みを使ったと思われる表示板となっていた。

世界各地の「巨大パタパタ」

世界各地の空港には大型の「パタパタ」が設置された。とくに大きなものの1つは、シンガポール・チャンギ空港第2ターミナルの中央部に掲げられていた表示板だという。

空港の「パタパタ」は地名のアルファベットを1文字ずつフラップで表現するため、表示が変わる際の動きは相当なものだ。近年は各航空会社が複数会社の便名を掲げる共同運航(コードシェア)が盛んに行われているが、同ターミナルの「パタパタ」はその各社便名を全部表示するという親切ぶり。何分かに1回、表示板全体がリセットされ、パタパタと新たな表示に変わっていく様はまさに壮観だった。

筆者は2020年2月に同ターミナルに立ち寄ったが、当時は装置全体が取り外されることなどつゆ知らず、ただ漫然とフラップが動く様子を眺めていただけだったのが惜しまれる。なお、個性のあるパタパタは世界各地で保存される例が増える中、この表示板はシンガポール国立遺産委員会へすでに寄付されており、同国の文化財として保存されることになった。

フランクフルト空港のフラップ式表示板。国内線フライト扱いの列車も表示される(写真:SANMIGUEL/PIXTA)

一方、現存する「パタパタ」で迫力があるのは、ドイツ・フランクフルト空港の第1ターミナルにある装置だろう。多数の航空便が発着する同空港だが、およそ半日分の出発便が表示されるだけでなく、よく見るとルフトハンザ航空の便名が付いた国内線フライト扱いの列車も示している。ただ、空港内の鉄道駅にある案内ボードはすでに液晶式に交換されているのが残念だ。

「パタパタ」が持つレトロ感から、使われなくなったボードを産業遺産として保存したり、空港の一部に外さないで残したりする活動も行われている。スイス連邦鉄道(SBB)は、フラップを1枚ずつバラした上で、それをモチーフとした家具やインテリア用のグッズに変身させ、一般向けに販売もしている。

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