東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に

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では、23区が転出超過となった背景に何があったのか。今回のニュースを伝える多くのメディアは「コロナ禍でテレワーク移住進む」「テレワーク普及で近隣県への転出が増加」などと伝えている。本当にテレワークが最大の要因なのだろうか。

筆者の周辺で昨年、都心から転居した3家族の転居理由は、「自然豊かな環境で暮らしたい」(23区内から房総)、「転職」(23区郊外から神戸)、「子育てのため実家で父母と同居」(23区内から九州)だった。逆に週の半分程度がテレワークという知人の多くは23区内から動いていない。

テレワークで地方移住、郊外転居を実行した人が、いったいどれだけいるのだろうか。テレビでは、23区から千葉県流山市や神奈川県小田原市に引っ越した若い夫婦2組のケースを紹介していた。共にリモートワークだというが、2組ともにIT関連企業勤務だった。職場環境が恵まれているケースだ。毎日、現場に向かわなければならないエッセンシャルワーカーの方々には無縁の世界である。

コロナ禍は3年目に突入したが、テレワークの実施状況はどうなっているのか。東京都のテレワーク実施率調査(1月7日発表)によると、2021年12月の都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は56.4%で、前月比で0.8ポイントの減少だった。「週3日以上」は45.6%で同0.4ポイントの減少。もっとも多いのは「週1日」で35.3%で、「週5日」は16.6%にとどまっている。日本生産性本部の最新の調査(1月)では、首都圏1都3県の実施率は26.8%で10月調査よりも10.1ポイントも下がっている。

マンション高騰も「脱出」原因か

こうした数字をみる限り、「テレワークで移住進む」はどうにも説得力に欠ける。楽観的過ぎるのだ。むしろ、他の要因があるのではないか。そこで住宅環境を調べてみると、仰天の事実が浮上してきた。東京23区の新築マンション価格の高騰である。

不動産経済研究所の「新築分譲マンション市場動向 2021年のまとめ」によると、首都圏の発売戸数は3万3636戸、前年比23.5%増で、東京23区は1万3290戸(シェア39.5%)だった。気になる23区の平均価格は8293万円(1㎡当たり128.2万円)で前年比7.5%アップ。首都圏全体平均の6260万円よりも2000万円以上も高い。東京都下5061万円、神奈川県5270万円、埼玉県4801万円、千葉県4314万円と、23区の突出ぶりが分かる。

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