台湾の日本産食品輸入解禁に反対する国民党 日本産品輸入で「子孫が途絶える」と発言

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過去に食品の安全性が懸念される問題がたびたび発生した台湾では、食品問題はすぐさま政治問題化するほどデリケートで人々の関心が高い。与党に返り咲いた民進党にとっては、政権発足から民意に配慮しつつ、党内もまとめ上げなければならない状況となった。

しかし、日台双方の民間をはじめとする各界の尽力によって、福島など5県産食品の風評被害は着実に払拭されていった。そして今回の解禁に最後の一押しを与えたのは、2021年12月18日に実施された住民投票だろう。成長促進剤「ラクトパミン」を使用したアメリカ産豚肉などの輸入全面禁止に反対との票が多数を占め、それが今回の解禁に大きく影響したのは間違いない。

世論が後押し、CPTPP加盟問題も見据える

さらに、台湾が日本主導のCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への加入を強く求めていたことも解禁に大きく働いた。今の台湾にとって、想定される経済規模は大きいが、中国の影響力が強いRCEP(東アジア地域包括的経済連携)への加入は、ハードルが非常に高い。経済活動を超えた要求を突き付けられるのは目に見えているからである。他方、半導体をはじめ世界経済における台湾の存在はかつてないほど高まっている。親日的な台湾のCPTPPへの加入は、日本だけを利するのではなく、域内全体の経済が一層活性化するのは確実である。

こうして台湾内部の問題が一段落し、外部要因の後押しもあって、今回の輸入解禁に踏み切ったのだった。

面白いことに、今回の解禁宣言によって、中国がこの問題を外交の切り札にすることを台湾が防いだとの見方も出てきた。2022年は日中国交正常化50年にあたり、中国は友好を示す手土産に福島食品の輸入解禁を考えていた。日本からすれば、厳格な監視体制の下で流通している産品を、経済的な措置どころか、友好のための政治カードに利用されることは理解に苦しむどころか不愉快すら感じる。しかし、台湾が先に解禁宣言したことで、中国は本来の科学的、商業的な問題として処理せざる得ない状況になった。

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