台湾の日本産食品輸入解禁に反対する国民党 日本産品輸入で「子孫が途絶える」と発言
つまり、歴史認識問題や尖閣問題などのように外交カードにならなくて済んだということである。台湾の宣言に対し2022年2月8日、中国外務省の趙立堅副報道局長は会見で、「台湾同胞の生命と健康に関わる問題であり、多くの同胞の目はごまかせないと信じている」と発言している。台湾では、この一言は「中国の当初の目論見をくじき、悔しさがにじみ出たものだ」と捉えられている。
そんな中、関係者らの思いをよそに、輸入解禁に中国と歩調を合わせたように反対を訴え続けているのが国民党である。旧正月連休を3日後に控えた2022年1月26日、蘇貞昌・行政院長(首相)は、政府が翌日27日にも福島など5県産食品について輸入解禁を発表するとメディアが報道すると、「科学的根拠と国際基準にのっとり、人々の健康を第一に考え問題に向き合い、検討する」と発言した。ところがその27日、国民党議員団総召(幹事)の費鴻泰氏は、「解禁を発表するなら残りの予算審議を拒否する」と発言した。結局この日は行政院発言人の羅氏が「行政院院会(閣議)では議題として取り上げられなかった、輸入解禁に向けた予定表もない」と述べるに至った。
日本の食品を食べると「子孫断絶」?
旧正月明け後も攻勢は続く。解禁発表後、国民党議員団は会見で「政府は2018年の住民投票で779万人が『核食』に反対だったことを無視している」とし、政府の議会での施政報告をボイコットすると発表した。同党は、福島など5県産食品と「核食」(放射能にまみれた食品)を分けて表現しているとされるが、そもそも「核食」なるものをわざわざ日本側から輸出する理由はない。単に人々の恐怖心をあおり、風評被害を助長していると言わざるを得ない。
そして極め付きは、2月10日の国民党議員団が開催した公聴会で登壇した、かつて厚労相を務めた楊志良氏である。楊氏は、台湾が福島食品を輸入すればさらに「絶子絶孫」(子孫断絶)に近づくと発言し、各界から猛非難が起きているのだ。儒教思想が根付いた社会にとって、人々は子孫が絶えることを何よりも恐れる。また、子どもを願う人々への侮辱にも等しい。「絶子絶孫」という言葉に憤りを感じた人は大変多いのだ。しかも、これは2009年から2011年まで、台湾の衛生部門を統括する人物から発せられたのである。もはや放言で済まされる問題でないのは明らかだろう。
台湾政府の福島など5県産食品の輸入解禁宣言からおよそ1週間が経過した。しかし、国民党の攻勢は続いている。単に輸入解禁に反対だけでなく、日本人の感情を逆なでし、さらに民意に反する行動を繰り返す同党に、人々は失望を通り越してあきらめモードが漂っている。政府や与党への反対や非難のためなら、国際的な友好関係の破壊をもいとわない国民党に、2022年11月の統一地方選でどのような審判が下されるのか今から注目していきたい。
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