このときに建設した港湾は、現在もムンドラ港としてアダニ・グループ傘下にある。陸路・空路との接続も良く、民間企業が運営する港としては国内でも最大規模の取扱貨物量を誇る。
アダニ氏の壮大なチャレンジは港湾建設にとどまらなかった。畳みかけるように、ムンドラ港近くに経済特別区を政府に働きかけて開発。これにより、港湾周辺に倉庫や工場を設置したい企業が、関税・所得税の減免といった便益を享受できるようになった。結果として、ムンドラ港の輸出競争力が高まった。現在、アダニ・グループは国内11カ所の港湾を傘下に持ち、民間の港湾オペレーターとしてはインド最大となっている。
モディ首相来日時には同行も
エネルギー分野でもダイナミックだ。オーストラリア、インドネシアなどに炭鉱を所有し廉価で石炭を輸入、発電・売電事業の競争力を高めている。民間発電会社としてもアダニ・グループは最大手であり、現在の総設備容量は8620メガワットに達している。もはやアダニ・グループは、モディ政権下の国づくりにおいては欠かせないプレーヤーといって過言ではない。実際、アダニ氏はモディ首相がグジャラート州首相だったころから親しい関係で、モディ首相来日(今年8~9月)に同行する財界人のひとりにも選ばれている。
アダニ氏の起業家精神にあふれたアグレッシブな戦略により、アダニ・グループはインドにおいて最もスピーディに成長する民間企業のひとつとなった。だが強みは事業戦略だけではない。アダニ氏は人の管理がうまく、仮に社員がミスを犯したとしても挽回するチャンスを与える寛容さを持ち合わせているという。このため、アダニ帝国の1万人超に上る従業員はみな、同社への高い忠誠心を持って働いているという。
有名大学卒業といった経歴を持たず、また中流階級出身でありながら一代で富豪となり、カオスの国で最大のインフラ・物流・電力会社を築き上げるに至ったアダニ氏。これだけのことのすべてが、ゼロ同然の状態から築き上げられたとは驚きである。彼はインドの若者に大きなインスピレーションと意欲を与えてくれる存在である。
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