【産業天気図・証券】株式市況の低調続き、証券大手の今期は軒並み減益・赤字、景況感は「雨」

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

証券業界の景況は、株式市場の低調を反映して前半は「雨」が続く。2011年4月以降も視界不良。景況感はやや回復しても「曇り」止まりだろう。

東京証券取引所1部の1日平均売買代金は、欧州財政不安と円高懸念が強まった今年5月以降、減少傾向が続く。5月の1兆8945億円から、8月には1兆1774億円まで減り、9月に入っても底ばいのまま。1兆円を割り込む日もある。2兆~3兆円台が続いた05年秋~08年秋と比べると、半分弱まで落ち込んだ格好だ。売買代金の低落は、証券会社の主要な収益源である、株式売買委託手数料の減少に直結する。株式相場の先行きは円高・デフレ下の景気不安を反映して非常に不透明で、売買代金回復の兆しは見えない。

また、日本証券業協会の集計では、国内公開会社の公募増資額は今期4~8月の5カ月間の合計で1兆5436億円と、まずまずの高水準。ただ、前期は金融機関をはじめとした自己資本強化の動きが相次ぎ、通期合計で6兆7254億円と歴史的な高水準だっただけに、今期はその動きも一巡し、反落が避けられない。増資の減少は大手証券中心に引き受け手数料の落ち込みをもたらす。

さらに、投資信託協会によると、公募投信の新規設定額は今年4月を直近のピークとして減少傾向にある。純資産額も株式市場の低迷などから伸び悩み。これらは投信の販売手数料や信託報酬の頭打ちにつながる。株の手数料の落ち込みに比べれば、投信は底堅いが、前期ほどの活況度はなくなりつつある。

こうしたことから証券業界の業績も今期に入って反落傾向が続く。会社四季報・秋号では、今期業績について前号から軒並み下方修正しており、大手・準大手証券はそろって減益、中堅以下は大半が赤字継続となる見込みだ。来期については、今のところ全般に改善を予想しているが、市況の行方は「異例なほど不確か」といえ、楽観はできない。
(中村 稔=東洋経済オンライン)

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