アジア太平洋地域のソブリン格付けは「安定的」から「ポジティブ」へ《ムーディーズの業界分析》
堅調な景気回復は、アジア太平洋地域の信用力のポジティブ要因
アジア太平洋地域の景気回復の特徴は、グローバルな危機を経験しても、政府のバランスシートの毀損が最小限かつ容易に回復できる程度で済んだことである。歳入の確保は景気と順循環的な関係にあるため、政府債務を抑制するためには継続的な景気拡大が重要である。この要因が政府歳入の拡大を助け、危機下での大規模な景気対策による債務増加の影響を緩和してきた。
また、景気が堅調に回復してきたため、金融緩和政策を継続する必要性が低下した。その結果、アジア太平洋地域の財政再建は、米国やユーロ圏の先進国に比べ、速いペースで進むだろう。これに伴って、同地域の大半の国では債務の安定化という効果も発生するとみられるが、日本は例外である。
中国と米国の景気見通しが最も顕著なリスク要因
アジア太平洋地域の経済は、グローバルな金融ショックの影響を受けにくくなっているが、同地域の貿易中心の経済は、中国の景気減速の長期化や、米国あるいはEUの経済成長の一層の停滞という極端なテールリスク(発生確率は低いが発生すると巨額の損失となるリスク)に対して脆弱であるとムーディーズはみている。