アジア太平洋地域のソブリン格付けは「安定的」から「ポジティブ」へ《ムーディーズの業界分析》

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SVP、リージョナル・クレジットオフィサー
トーマス・バーン

回復基調にあるアジア太平洋地域の信用状況

アジア太平洋地域全体のソブリン格付けトレンドは、「安定的」から「ポジティブ」の方向性を維持している。同地域では、グローバルな危機を起因とする格下げは生じていない。向こう12カ月間、信用ファンダメンタルズは安定的に推移するとみられる。

2010年初めから現在までに、2カ国が格上げされ、1カ国の格付け見通しがポジティブに変更された。また、バングラデシュに新規格付を付与した。見通しが「ネガティブ」とされているのは3カ国である。今後数カ月間にわたり、タイとベトナムの格付けを精査する。

中国の力強い成長が地域経済のV字型回復を後押し

中国向けの強い輸出需要が、アジア太平洋地域の景気回復の主要な牽引役となっている。中国は東アジアの主要国にとって最大の市場となった。大半の国で、経済活動は完全に危機前の水準に回復した。中国と他の新興国が、今年上半期のグローバルな景気回復を牽引した。

景気回復は、成長の原動力としての中国の台頭を浮き彫りにしている。過去に米国が果たしたのと同様の役割を中国が果たしている。銀行セクターを通して実施された中国の大規模な景気刺激策が、住宅投資を中心とする国内需要を喚起し、地域の輸出を押し上げた。

貿易面での域内統合の強化も進むとみられる。今年初めには、ASEANと中国の自由貿易協定(FTA)に基づき、東南アジア主要6カ国と中国との間で、貿易品目の90%に対する関税が撤廃された。6月には、中国と台湾との間でFTAに相当する経済協力枠組み協定(ECFA)が締結された。これに触発され、台湾とシンガポールも同様の自由貿易協定の締結の可能性を検討している。

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