「日本の山で最恐生物はダニ」と昆虫学者が語る訳 刺されて死に至ることも!アウトドア好きは注意

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そして海外に行くと、病気を媒介するという点では、カ(蚊)が怖い。とくにアフリカに行くとマラリアが流行している地域は少なくなく、それを媒介するハマダラカには、用心していても刺されてしまう。

マラリアはマラリア原虫という病原体が体内に入ることで発症し、高熱や頭痛などを引き起こす。熱帯・亜熱帯を中心に毎年、数十万人もの死者を出す危険な病気だ。

原虫の種の違いによって5種類のマラリアに分かれるが、とくにアフリカでは重症化しやすい熱帯熱マラリアというタイプが多く、免疫のない日本人がかかると非常に危険である。ハマダラカが活発になる夕方にはとくに気を付け、虫よけスプレーをしっかりと塗ったり、事前にマラリア予防薬を飲んだりと、見えにくい影におびえて調査を行うことになる。

アフリカ睡眠病を媒介する「ツェツェバエ」

吸血する昆虫による病気の媒介といえば、アフリカはそういう虫の宝庫で、つねに戦々恐々としている。カメルーンを訪れたときには、ツェツェバエに何度も刺された。アフリカ睡眠病という恐ろしい病気を媒介する虫で、帰国後には発症しないかとハラハラした。

筆者を刺した「ツェツェバエ」の一種(筆者撮影)

この病気は予防薬もないし、発症すれば副作用の強い毒のような薬を服用しなければならないし、そもそも日本では治療が困難である。熱帯の流行病は日本で治療ができない(薬が承認されておらず、在庫もほとんどない)ものが多く、確実に発症しそうであれば、熱帯アフリカに植民地を持っていたフランスなどで治療したほうがよい場合がある。

また、アフリカや南アメリカではサシチョウバエというカより小さなハエがリーシュマニア症という病気を媒介する。リーシュマニア症も、原虫が原因となる病気で、症状が異なる複数の病態がある。

最も多く見られるのは皮膚リーシュマニアで、感染すると数週間から数カ月で皮膚に複数の腫れ物やコブができ、最終的には痛みを伴う潰瘍となる。内臓リーシュマニア症の場合は、死に至ることもある。

なにしろ小さいのでなかなか気づけない。しかもカと異なり、直線的に飛んできて、いきなりブスリと刺す(少し痛いのですぐに気づく)。何度か刺されたが、幸いにして発症することはなかった。これも予防薬はなく、発症したら早く治療することが必要である。そのほか、ブユやアブもアフリカでは病気を媒介する。

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