台湾で三井アウトレットが「王様」となった理由 徹底した現地化を推進、台湾小売業界の覇者に

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時は戻って、三井アウトレットパーク林口が開業した2016年10月。当時はこれほどの業績を収めるとは思っていなかった、と下町董事長は振り返る。しかし、林口店の業績はオープン初年から好調だった。三井不動産は郊外開発に手応えを感じ、それが台湾各地への投資につながっていったのだ。豊富な経験を携えて台湾にやってきた下町董事長が、台湾のアウトレットパーク開業後に最も驚いたのは、「台湾人の食への熱意」だという。日台の消費者行動の違いを目の当たりにした三井アウトレットパークは、すぐに台湾市場に合わせた戦略をとった。

ローカライズ戦略でブランド力強化

下町董事長は、日本人にとっての外食は一種の贅沢であると話す。一方、台湾には朝食から外食をする習慣があり、日本人とは外食に対する意識に差があると言えるだろう。そのため、三井アウトレットパークでは客単価と飲食店の比率の設定に大変苦労したという。開業前には、社内の台湾人スタッフと日本人スタッフの間で激しい論争になったほどだった。

「台湾の市場規模はまったく小さくない」。台湾三井不動産の下町一朗・董事長兼総経理は台湾市場をそう分析する(写真・劉咸昌)

しかし最後には、「台湾人スタッフの意見を聞いた」と下町董事長は話す。その結果、台湾の三井アウトレットパークでは飲食店の比率が3割に引き上げられた。これは同業の約2倍という数字だ。またグルメストリートの客単価も250台湾ドル(約1040円)、高いところで300台湾ドル(約1250円)以上に設定された。台湾の百貨店における一般的な客単価より20%以上も高い設定だが、この戦略は台湾の消費者に受け入れられた。

「食事をすれば、滞在時間が一気に3、4時間に延びる。滞在時間が延びるに従い、自然と消費も高まっていく」。下町董事長は、台湾人の食事への関心の高さが滞在時間を延ばしていると分析している。台湾の三井アウトレットパークにおける客の平均滞在時間は、日本より2時間以上も長い。

上述の通り、三井不動産では2022年中に「ららぽーと台中(仮称)」を開業予定だ。建設予定地は在来線台中駅から徒歩6分の「台糖湖浜生態園区」。ららぽーとではアウトレットのような前シーズンの商品の特価販売などは行わず、シーズンのトレンド商品を扱うという。ららぽーとは直近3年以内に台北と高雄でも開業する。三井ブランドが台湾小売業界の王様になることがほぼ確定したと言えるだろう。

財団法人商業発展研究院・人工知能サービス総合研究所の范慧宜(はん・けいぎ)所長は三井ブランドの成功について、「三井アウトレットパークは台湾初のアウトレットでもなければ、他に競合もある。しかしブランドイメージが深く定着しており、今では台湾でアウトレットと言えば三井、まさにアウトレットのリーディングブランドと言える」と指摘する。

下町董事長は、台湾人は親しみやすいと話す。そんな台湾人は、三井アウトレットパークに毎年100億台湾ドル(約415億円)以上という驚くべき額の収益をもたらした。今後、新しいショッピングモールが次々と開業することで、収益はさらに伸びていくことだろう。三井アウトレットパークが台湾で人気を博しているのは単に日本のブランドだからではない。三井不動産のきめ細かなサービスが、台湾の消費者に喜ばれているのである。三井ブランドは「日台友好」というステージを越え、台湾市場における新しい地位を確立したと言える。
(台湾『今周刊』2022年1月19日)

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