台湾で三井アウトレットが「王様」となった理由 徹底した現地化を推進、台湾小売業界の覇者に

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2016年に開業した台湾の三井アウトレットパーク林口店。三井アウトレットが、台湾のアウトレットのトップブランドになっている(写真・今周刊)
「全品40%オフ!」「当店70%オフから!」このような消費者の耳目を捉えるポスターが並ぶ、だがここはデパートのバーゲン会場ではない。365日、常に割引価格が提示され、つい財布の紐が緩んでしまう場所──アウトレットモールだ。
新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、台湾のアウトレットモールは「消費者の体験」を重視し続けた結果、活気ある業態へと成長した。台湾の主要アウトレット企業の収益は300億台湾ドル(1244億円)を突破しつつある。このほとんど無から生まれた「新しい消費力」に、業界を越えて台湾のデパート最大手・新光三越も参入。台湾におけるアウトレットの爆発力が証明されたと言えるだろう。
その新光三越の前に、いち早くこの趨勢をキャッチし投資を進めてきた企業がある。日本の三井不動産だ。三井不動産は、2022年2月に「三井アウトレットパーク台南」を開業し、台湾の北部、中部、南部の各地を制覇する。これにより2022年の台湾アウトレット業界の収益の50%以上を三井アウトレットパークが占める見通しだ。三井不動産は新時代の台湾小売業界の王様となったのだ。

「台湾市場は小さくない」

「台湾は大きな市場だ。チャンスがあれば、さらに開発を進めたい」。笑いながらこう話すのは台湾三井不動産の下町一朗・董事長兼総経理(代表取締役会長兼CEOに相当)だ。

三井不動産の勢いは実績を見ればすぐにわかる。2021年12月、中部の中核都市・台中市の三井アウトレットパーク台中港で、第2期エリア開業により約50店舗がオープンし、利用客から好評を得ている。そして旧正月を経て日本でいうところの小正月に当たる「元宵節」直後の2022年2月16日には、三井アウトレットパーク台南のテスト営業がスタート、2月25日にグランドオープン予定だ。

三井アウトレットパーク台南は、台北市隣接の新北市に位置する「林口」、台中市の「台中港」に続いて初の南部進出となる。オープンまでまだ日があるものの、インターネット上ではすでに多くの期待の声が寄せられている。また、北部の林口店でも第2期計画がすでに着工しており、2024年のオープン時には台湾北部最大のショッピングモールになる見通しだ。

三井不動産が台湾で注力しているのはアウトレットの開業だけではない。同社は日本でショッピング、グルメ、娯楽が1カ所で楽しめる複合商業施設「ららぽーと」も展開しているが、その台湾1号店が「三井ショッピングパーク ららぽーと台中(仮称)」としてオープンするという。開業時期は当初の発表より1年前倒しの2022年下半期だ。台中進出後は、台北市南港に、南部・高雄市の鳳山区での開業を予定。アウトレットパークと同様、ららぽーとも北部、中部、南部をカバーする形で展開していく。

「台湾に来て6年、台湾人から『台湾市場は小さい』と聞いてきたが、私たちは台湾市場が小さいとはまったく思っていない」この既成概念をくつがえす台湾三井不動産の下町董事長の言葉は、台湾で驚きをもって受けとめられている。

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