テレ朝「ローカル局再編」の規制緩和を求めた真意 費用軽減でネットワーク維持狙うも課題は山積

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計114局ある地方局の売上高は、2014年度に全社合わせて7055億円あったが、2020年度には5933億円と16%減少。さらに営業利益は1社あたり5億円程度あった計算だったが、2020年度には1億円にまで落ち込んでいる。2020年度は新型コロナの影響もあり、テレビを運営する放送局のうち20社が最終赤字になった模様だ。

地方局はキー局にとって全国ネットワークの生命線だが、ネットや動画配信の普及などによって娯楽は多様化しており、今後もテレビ広告収入は落ち込んでいくと想定されている。2019年にはテレビ朝日HDが「系列局の経営危機に対する対応」と題して、系列局の指導に乗り出していた。

狙いは放送設備の費用軽減

こうしたテレビ広告の落ち込みに追い討ちをかけるのが、10年から15年に1度必要な放送設備の更新だ。放送を行ううえで欠かせない放送設備だが、その費用負担は「利益を大幅に削る要因だ」(ある地方局幹部)。仮に、広告収入の低下が続けば、その重い費用負担に耐えられず営業が続けられない地方局が発生する可能性もある。

この課題解決につながるのが、県域規制の廃止を踏まえた地方局同士の再編だ。各県に分かれている複数の地方局を集約させれば、局ごとに必要だった設備費用が大幅に軽減される。このように費用を削減することで、地方局の収支を立て直す狙いがあるようだ。

「(系列局は)現時点では黒字」(テレビ朝日HD・藤ノ木取締役)とのことで、いますぐに再編が始まるというわけではない。だが、将来的な経営環境が不透明なことに鑑み、系列局が経営危機に陥る前に先手を打つ構えだ。

こうした県域制度の廃止について、総務省は「地域社会の実態等も踏まえつつ、経営の選択肢を増やす観点から、柔軟化を図ることを検討すべきではないか」と整理。将来起こりうる地方局の経営難対策の1案として前向きな姿勢とみられる。複数の有識者からもテレビ朝日HDの要望は「極めて意欲的だ」と評価された。

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