保健所からの連絡を待つ間、自分の部屋から出ないようにし、部屋にたらいを置いた。ここでうがい、歯磨きを行う。洗面所には行かない。部屋を出るのはトイレだけ。トイレに行く際は手指を消毒したうえでビニール手袋をし、マスクをし、短時間で戻った。洗濯物は家族と別にした。
家族は濃厚接触者で外に出られないため、買い物はネットしかない。生活費は高くつく。生活のことが心配になり、傷病手当金や保険で出るものはないかを調べた。このままだと、少なくとも10日の間は仕事を休むことになる。これは大きい。
寒気から5日目、陽性判定から3日目の1月24日。少し回復してきた。声が出て、体も動かせるようになってきた。東京都のホームページを見ていると、保健所から連絡を受ける前に、陽性者が自ら宿泊療養を申し込める電話窓口がある。早速、電話した。重症化リスクが高い家族がいることを告げ、早く自分を隔離してほしいと申し込むためである。
受付時間は9時から16時。話し中でなかなかつながらなかったが、5回目で男性の係員が出た。事情を訴えると、相手はこう言った。
「混みあっていますので、最短で明日、または明後日に保健所から連絡が来ると思います」
やっと気持ちが少し楽になった。保健所から連絡がようやく来るのだ。
搬送車のドライバーから唐突な連絡
1月25日。保健所から連絡はない。自室にこもっているため、テレビのニュースも見られず、スマホで情報を集めた。
そんな中、ネットで「東京都の自宅療養者3万人超! ホテル療養施設2000室も空いているのになぜ入れないのか」という記事に行き当たった。この日の午後2時にアップされたばかりだ。
それによると、自宅療養者は24日に過去最多の3万1963人、それとは別に「入院・療養等調整中」が2万9490人。一方で宿泊療養者向けに用意されたホテルでは2000室以上が空いているという。使用率の低さは1年以上も前から報道や議会で指摘されてきたが、まだ改善されていないのか。
すっかり暗くなった午後6時9分、スマホに着信があった。表示された番号に覚えはない。男性だった。
「ドライバーです。午後6時35分にお迎え予定です。今から20分後です」
陽性者を宿泊施設まで連れて行く搬送車の運転手だという。
私が聞いていた手順では、宿泊療養が決まった場合、前日夜に行先と迎えの時間を電話で知らされ、搬送車の到着直前にドライバーから電話があるはずだった。ドライバーから電話がいきなり来て、しかも20分後に来ますと言われても……。
「保健所から1回も電話をもらったことがなく、(この時間に迎えが来るとは)聞いてないんです。大丈夫でしょうか」
私はそう尋ねた。ドライバーさんによると、搬送車にはもう1人陽性者が同乗するが、その人も保健所から何も聞いておらず、搬送会社を通じて確認中だという。私は、急いで荷造りを始めた。行先はホテルなので着替えがあればなんとかなりそうだ。
ところが、今度は迎えの時刻を過ぎても、どこからも連絡がない。私はドライバーさんに電話してみた。
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