岸田首相の「新時代のリアリズム外交」とは何か 「宏池会」が目指す、「清和会」とは異なる政策

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もう一つの自負は、宏池会に対する誇りであろう。1955年に保守合同して結成された自民党内には2つの流れがある。岸田氏に言わせるとそれは、自主憲法制定や再軍備を主張した鳩山一郎を中心とする「戦前保守派」と、再軍備を脇に置き敗戦で疲弊した日本経済再生を優先した吉田茂を中心とする「戦後保守派」である。

「戦前保守派」は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって公職追放され、後に解除されて政界に復帰した勢力が中心だった。宮澤喜一元首相は、当時の状況について「鳩山さんに代表される追放復活者の方々の顔ぶれを見て、彼らの信条どおりの政治が実現すれば、明らかに戦前にさかのぼることになるのですから。私たちとは明らかに違う人たちが戻ってきたということがはっきりしていました」(『90年代の証言 宮澤喜一』)と述べている。

岸田氏に言わせると、戦前のイデオロギーにこだわる鳩山らに対し、吉田らは現実主義(リアリズム)に徹してきた。それが宏池会に生き続けており、「新時代のリアリズム外交」という言葉が出てきたのであろう。

そのうえで自らの経験を踏まえた外交について、「外相時代の経験から言えば、外交では対話を絶やさないことが重要だ」「外交の要諦はまず相手の話を聞くこと。すべてはそこから始まります。相手国にこちらの思いを押し付けてはならない。押し付けたら向こうは受け付けてくれません」と述べている。いかにもハト派らしい考え方である。

日米関係については意外に懐疑的

主要国との関係についてみてみると、まず日米関係については意外にも懐疑的な考えを持っていることがわかる。もちろん日米同盟関係の重要さを認めているが、「アメリカとの適切な距離感が、今後の日本外交の一つの課題になると考える」、「日本はアメリカの代理国ではなく、独自のどんな役割を果たせるのか。ルール作り、枠組み、アジア地域の秩序維持をリードする役目がある」として「日米安保体制のバージョンアップ」を唱えている。

こうした発想は、日米関係を最優先してきた小泉、安倍首相ら清和会政権との大きな違いでもあるだろう。しかし、その具体的内容はまだ明らかにはされていない。

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