岸田首相の「新時代のリアリズム外交」とは何か 「宏池会」が目指す、「清和会」とは異なる政策

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就任直後の国会での所信表明演説で岸田首相は外交について「強い覚悟をもって毅然とした外交を進めます」と発言していた。「毅然とした外交」は自民党内タカ派が好んで使う表現だ。就任直後の高揚感もあってこういう言葉を使ったのかもしれないが、1月の演説からは消え、正反対の「リアリズム」が登場した。

こうした変化から推測するに、岸田首相は森喜朗首相を皮切りに小泉、安倍氏と続いた清和会出身政権の外交政策に少なからぬ違和感を持っているのだろう。しかし、いきなり宏池会的カラーを前面に出せば党内の強い反発を招くことになる。だから、宏池会のホープである林芳正氏を外相に起用したうえで、権力基盤を徐々に固めながら自分らしい外交を展開しようとしているのかもしれない。

そこで岸田氏の著作物(『岸田ビジョン』、『核兵器のない世界へ』)などから、岸田首相のいう「新時代のリアリズム外交」を読み解いてみたい。

外相を長く務めた自信と「宏池会」の誇り

一見、控えめに見える岸田首相だが、安倍政権時代に4年7カ月も外相を務めたこともあって、「外交・安全保障の分野では、私以上に経験豊かな政治家はあまり見当たらないと自負している」と、外交にはかなりの自信を持っている。

安倍政権時代の外交は、安倍首相とトランプ大統領の緊密な関係、官邸主導で展開された北方領土問題に関する日ロ首脳会談など、主要外交はことごとく安倍首相中心に展開され、岸田外相の影は薄かった。数少ない成果だった従軍慰安婦をめぐる日韓合意も、文在寅大統領があっさりと反故にしてしまった。そういう意味では不遇の外相でもあるが、長期間の外相時代に培った世界各国の人脈の広さなどが岸田氏の自信につながっているようだ。

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