アメリカの高校生が学ぶ「環境経済学」の超基本 持続可能な経済成長をどのように実現するか
政府がコモンズを管理する実例を挙げると、国立公園局、土地管理局、森林局などがそうだ。これらの政府機関の役割は、国のコモンズである自然を守ることだ。しかし、実際に決定を下す役人たちは、自分たちが管理するコモンズから遠く離れた場所で働いている。
彼らはしばしば、利益団体から圧力を受け、ごくわずかなコストでコモンズを利用することを許可してしまうことがある。政府が管理する土地の多くがコモンズの悲劇を経験するのもこのためだ。
たとえばアメリカ西部の牧草地は、政府がお金を出して管理しているために、付近の酪農家がこぞって自分の家畜を放して餌場にしている。その結果、せっかくの牧草地が過放牧で荒れてしまった。
国立公園の本来の目的
また、国立公園の本来の目的は、アメリカの美しい自然を保護することだ。しかし、大勢の観光客が訪れ、さらに観光客のための道路や建物、キャンプ場を整備したために、かえって自然が荒らされてしまっている。
コモンズの悲劇を効率的に解決したいなら、「コモンズを誰かの所有物にする」という方法がある。土地が私有地であれば、所有者には土地の生産性を維持しようとするインセンティブがある。
言い換えると、酪農家が牧草地を所有すれば、過放牧で荒れ地にするようなインセンティブはほぼ存在しないということだ。むしろ牛を移動させたりして、土地を適度に休ませようとするだろう。牧草地を自分で所有しているなら、管理コストも自分で負担しなければならない。そこでコストを最小限に抑えるために、もっとも生産性が高く、もっとも効率的な管理を行おうとする。
もっとも古く、もっとも実用的な解決策は、コモンズを利用する人たちの話し合いで管理を決めるという方法だ。そして、これがもっとも現実的な解決策かもしれない。
2009年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者エリノア・オストロムは、コモンズの悲劇を研究し、コモンズをすでに利用している人たちによる話し合いがしばしば最適の解決策につながるということを発見した。コモンズが存在する地元のコミュニティ内に非公式の取り決めがあると、コモンズはもっとも適切に管理される。