首相と軋轢?尾身会長「突然の変身」が広げた波紋 一転して柔軟な対応を主張、自治体は混乱

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これに先立ち、年明け以降のオミクロン株による感染爆発に対し、岸田首相は仕事始めの4日、3回目のワクチン接種の前倒しや、無料検査の拡充、経口薬の確保、医療提供体制の強化などの対応をアピール。陽性者の全員入院という対応も見直し、宿泊施設や自宅療養を活用していくという新たな方針を提起した。

岸田首相サイドは、17日召集の通常国会での野党の追及を交わすためにも、「先手、先手の対応を続けることが重要」と判断。就任後初の施政方針演説でも、「コロナ対策最優先」を繰り返しアピールした。

また、岸田首相は、まん延防止等重点措置適用の先に想定される緊急事態宣言発出についても「機動的に検討する」として、政府は都道府県の要請に速やかに対応する姿勢を示した。これも、宣言発出について、「経済的打撃への懸念から慎重姿勢を示して『後手批判』を受けた菅前政権の轍は踏まない」との岸田首相の判断を踏まえたものだ。

そうした中、岸田首相周辺は、専門家代表として発信する尾身氏についても「菅政権のときのような特別扱いはしない」(岸田派幹部)と漏らしていた。菅前首相がコロナ対策での記者会見に尾身氏を同席させ、「どちらが最高責任者かわからない」と批判が集中したことを意識したからだ。

ただ、尾身氏自身はこうした“尾身外し”の動きに危機感を強め、「あえて政府の対応と異なる柔軟路線を打ち出した」(専門家会議関係者)との見方も広がる。専門家の間でも「尾身氏は極めて政治的」(有力専門家)と揶揄する向きは多いが、尾身氏の真意は不明だ。

「本当の正念場」を迎えた岸田首相

12日に1日当たり1万人を超えた全国の新規感染者数は、1週間後のまん延防止等重点措置の大幅な適用範囲拡大を決めた19日には4万人超と過去最多を更新した。21日からの適用を前に、20日も多くの都道府県で過去最多となり、当面、感染爆発の勢いは止まりそうもない。

これまで、「最悪の事態を想定して取り組む」という岸田首相の先手対応が国民に評価され、オミクロン感染爆発でも内閣支持率は高水準を維持してきた。しかし、岸田首相が「ウィズコロナ」戦略を成功させるには、現在の感染爆発防止が最大のカギとなる。

政府が「先手」による行動制限拡大に踏み込み始めたことに、与党内からも世論の反発を懸念する声が相次ぐ。岸田首相周辺も、「行動制限や自粛要請が拡大・長期化すれば、国民の不満は政権へ向かい、あっという間に内閣支持率も急落しかねない」と危機感を強める。

岸田首相は施政方針演説で「国民の信頼と共感を得ながら、丁寧で寛容な政治を進めていく」と力説した。しかし、尾身氏との軋轢も含め、政府与党内の足並みの乱れを露呈すれば、国民の信頼は一気に失われる。

専門家の多くは、オミクロン感染爆発のピークアウトを2月初旬と見込んでいる。それまでの約2週間が岸田首相のトップリーダーとしての真価が厳しく問われる「本当の正念場」(側近)となるのは間違いなさそうだ。

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