中国のゼロコロナ失敗が世界最大リスクになる訳 都市封鎖や入院拒否で住民の政府への不満募る

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西安でのPCR検査(2021年12月23日) 

4回のロックダウンで計74回検査した2歳児も

中国では武漢から始まったコロナ第一波が終わると、感染者数はゼロ付近でいったん落ち着いたが、昨年5月にデルタ変異株の感染者が国内で見つかると完全排除は難しくなった。感染が拡大していたミャンマーと国境を接する雲南省の町、瑞麗では国境沿いに鉄条網が設けられたほか、7カ月で4回のロックダウンが行われた。こうしたコロナ対策で多くの中小企業は廃業。住民は例外なく頻繁に検査を受けており、地元メディアによれば、合わせて74回検査した2歳児もいた。

ワクチン接種率が約97%の瑞麗は21年にコロナで死亡した住民はいなかったと報告。瑞麗の元助役で今は国有鉄道建設会社の幹部として働いているタイ・ルォンリ氏は「どんなロックダウンも深刻な精神的、物質的損失だ。コロナとの闘いは全て、不幸を重ねることになる」とソーシャルメディアに投稿した。

河南省安陽県(1月13日) 

中国で10番目に大きな都市である西安は昨年12月、デルタ株の感染症例に見舞われたが、当局の対応が新たな怒りを招いた。食料品の買い出しを禁止した行政側が住民に食料を届けることができなかったためだ。たばこをインスタントラーメンなど常温保存食品に住民同士で交換し合う場面も見られるようになり、ある女性は生理用品を購入するため外出を許可するよう当局に涙ながらに訴える動画を投稿した。

2人の妊婦はコロナ対策の決まりだとして入院を拒否され流産。コロナ検査を受けていなかった60代の男性は幾つかの病院に受け入れを拒まれ、心臓発作で亡くなった。検査を受け陰性と判定されたときには手遅れだった。

こうしたことは全て、オミクロン株出現前の出来事だ。オミクロン株はまず、北京に隣接する天津で確認された。それから中国中部の安陽で、次に東北部の港湾都市である大連に広がった。天津市は市全体のコロナ検査を命じ、企業と役所を半日閉鎖した。トヨタ自動車とフォルクスワーゲン(VW)はコロナ検査のため工場の操業を止め、天津に航空機組み立ての拠点を置くエアバスも、中国での生産と需要に対するオミクロン株の影響について警告した。

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