新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まってから約2年が過ぎた今、大半の国がコロナとの共存を選び、日常生活の一部として受け入れようとしている。だが、感染拡大に最初に見舞われた中国は、コロナを一切容認しない「ゼロコロナ」戦略で別の道を歩んでいる。達成は容易ではない。
国境が閉鎖され、ワクチン接種率が90%近くにもかかわらず、感染力の強いオミクロン変異株は7つの第1級行政区(省・直轄市・自治区)と全主要都市に広がっている。港湾は混乱し、ロックダウン(都市封鎖)も常態化しつつある。昨年10-12月(第4四半期)の経済成長率が4%に低下したと発表された17日、中国人民銀行(中央銀行)は約2年ぶりに中期貸出制度(MLF)金利の引き下げに踏み切った。
都市封鎖で医療受けられず2人流産、2人死亡
人が払う犠牲も増えている。陝西省の省都、西安では昨年のクリスマス前に始まった厳しい封鎖措置で医療措置を受けられなかった女性2人が流産、少なくとも2人が死亡したとされる。公式発表では1日当たりの新規感染者は数十人で、死亡者はいない。
西安郊外にある電気自動車(EV)会社で働く55歳のゼネラルマネージャー、ホ・クンさんは「全員を安全にするための措置だということは分かっている。1カ月程度ならいいと思うが、それが半年続くとなると、誰もが職を失い、企業は閉鎖に追い込まれるだろう」と語る。
厳密に言えば、中国は何カ月も「ゼロコロナ」の状況ではない。新たな変異株が出現するたび、習近平政権と世界経済へのリスクは高まる。ユーラシア・グループは中国のコロナ戦略失敗を2022年の最大リスクとして挙げている。中国はオミクロンとその後の変異株を完全に防ぐことができず、ロックダウンが広がり、サプライチェーンの混乱が続くと同社は予測。「低成長と高インフレ、不平等拡大が行政に対する人々の不満を増幅させ、1990年代以降見られなかったような政治不安をかき立てる」との見方を示した。