「褒めて育てる」でわが子を追い詰めた母の気づき 息子は「僕を捨ててね」とまで言った
息子さんは本当に捨ててほしかったわけではありません。強烈な自己否定感ゆえに出た言葉です。なぜこうなってしまったのか。それは部分的な登校などができることを「小さな成功体験だ」と思っていたのが親だけだったからです。メッセージの受け取り手である子ども本人は、それらのことを「失敗体験」だと思っていたのでしょう。1時間だけ学校へ行けても、本人は「ほかの時間は行けなかった」と思ってしまう。宿題ができても「学校へは行けなかった」と思ってしまう。「みんなにはできて、自分にはできないということを確認させてしまう日々だった」とお母さんはふり返っています。
否定せずに子どもの話を「聞く子育て」
「僕を捨てて」という言葉にハッとしたお母さんは登校させることをすっぱりあきらめます。その後、意識したことの1つが「雑談」でした。親子で何気ない会話をすると、暗かった息子さんがイキイキとしゃべり始めたそうです。
不登校関係者のあいだでは、以前から雑談の効果が注目されていました。子どもの話を否定せずに聞いたり、子どもが好きなことを聞いてみたりする。それらの積み重ねで子どもが元気になり、進学など次のステップにもつながりやすくなる、と。褒める子育てを否定する気はありませんが、子どもが自己否定感を感じやすいときには注意が必要です。
臨床心理士・掛井一徳さんは、雑談や対話が「誰にとっても必要な時間」だと言います。自分の身に起きたことを誰かに話すことで気持ちが整理され、よいことも悪いことも「心の栄養」に切り替わっていく。共有することで初めて体験は自分に根付いていくのだそうです。習い事や勉強などの「インプット」につい目が向きがちですが、「話をする」というアウトプットも必要なのです。褒める子育てよりも「聞く子育て」のほうが重要では、とも指摘されています。
では、聞くことに重点をおいた「聞く子育て」を始めるときは「できる範囲」が大事なんだそうです。料理をするあいだや寝る前の10分間だけは子どもの話を「否定せずに聞く」。また、話をしてくれない子どもに対しては、本人が楽しんでいる動画やゲームを横で並んで見るだけでも効果的なんだそうです。もしよければ「聞く子育て」を実践して子どものようすを見てみるのはいかがでしょうか。
(執筆・石井志昂/写真・矢部朱希子)
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