物価の上昇に対して、賃金は上がるだろうか?
毎月勤労統計によると、2021年10月の現金給与総額の対前年比は、0.2%の上昇にすぎない。
今後仮に上昇率が上がるとしても、物価上昇を補うのが精一杯だろう。実質賃金が上がるような事態になるとは、到底考えられない。したがって、勤労者世帯の生活は厳しくなるだろう。
2020年は、勤労者世帯の収入が減少していないにもかかわらず、一律定額の特別定額給付金が給付された。本当に生活保障が必要なのはこれからの物価上昇に対してなのだが、それに対して特別給付金が与えられるはずはない。
年金生活者の生活は苦しくなる
それでも、賃金で守られる人々は恵まれている。
年金生活者の場合、事態はもっと深刻だ。
年金は物価にスライドして上昇する。しかし、物価上昇率が一定限度を超えると、マクロ経済スライドが発動される。
これまでは物価上昇率が低かったために一度しか発動されていないのだが、実際は物価上昇率が高まると発動される。これがフルに発動されると、名目額が0.9%減少する。だから、年金の実質価値は低下することになる。
それだけではない。物価上昇率が低いために調整できなかった分を、物価が上昇したときに調整する仕組み(キャリーオーバー)が2018年4月に導入された。
物価上昇率が高くなると、この仕組みによって、年金額が大幅に引き下げられる。だから、高齢者世帯の生活が苦しくなることは、ほぼ間違いない。これによる年金減少分は、インフレが収まっても取り戻せない。
さらに大きな問題は、貯蓄の実質額が目減りすることだ。銀行預金などの名目資産で持っている場合には、確実に物価上昇分だけ下落する。
また、それ以外の形態での資産でも、実質価値が守られる保証はない。
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