海&陸、西九州新幹線「車両輸送」ドキュメント 「めったに見られない」、開業に向け格好のPRに

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初回の陸送は無事終わり、2回目の陸送が行われる11日午前1時すぎ。あいにくの小雨模様にもかかわらずルート終盤にある交差点には10数人の住民たちが新幹線を待ち構えていた。

「前夜に新幹線が通り過ぎたと聞いた。今日も来ると思ったが時刻がわからず早めにやってきた」と近所に住むという女性が話す。それから30分後、交差点の人だかりは50~60人に増えた。しばらくすると人だかりの一部から「来た」という声が上がり、トレーラーに牽引された最初の車両が姿を見せた。車体には2号車と記載がある。中間車だ。1両の長さは25mもあるにもかかわらず通常の大型トラックと同様の速度で交差点を左折。瞬く間に姿を消した。少々あっけなかった。

さらに20分ほどすると、1台のバンがやってきて警備員たちが降りた。交差点の各所に立ち、誘導を行う。雰囲気が物々しい。「先頭車両が来るのかな」。人混みの間で緊張感が走った。その数分後、まず誘導車、次いでトレーラーに牽引された1号車が姿を見せた。真打ち登場。「おお!」。中間車のときとは比べものにならないほどあちこちで歓声が上がった。

新幹線開業の「光と影」

先頭車の全長は中間車よりもさらに長いので、交差点での左折は中間車よりも難しいはず。もっとゆっくりとカーブを切るのかと思ったが、今回も車両はスムーズに左折して、走り去っていった。この交差点は幅が広い道路が交差しているので、新幹線車両の左折はさほど難しくないのかもしれない。先頭車を見て満足したのか、あるいは雨が降る深夜の寒さに耐えきれなくなったのか、ほとんどの人が3両目の車両が姿を見せる前に立ち去ってしまった。

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海上輸送に続き、陸送の模様も地元では大きく報道された。長崎市、諫早市、そして今回の陸送の舞台となった大村市といった長崎県内の沿線自治体はもとより、武雄市、嬉野市といった佐賀県西部地域にある新幹線の沿線でも歓迎ムードは強い。しかし、同じ佐賀県でも武雄温泉と博多を新幹線フル規格でつなぐ構想に対しては、在来線の利便性低下など失うものが大きいという理由で県が猛反発する。

新幹線開業という「光」の裏には「影」もある。鉄道開業150年を迎える今年は、光の部分だけでなく、影についてもしっかりと見つめていく必要がある。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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