海&陸、西九州新幹線「車両輸送」ドキュメント 「めったに見られない」、開業に向け格好のPRに

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期待に胸を躍らせ全国からやってきたツアー参加者を乗せたクイーンビートルは、晴れ渡った青空の下、1月7日11時半に博多港を出発した。航海速力約36.5ノット(時速約67km)を誇る高速船が1時間ほど航行すると、穏やかな海に浮かぶ新幹線車両を運ぶ台船が見えてきた。甲板上の前半分に中間車4両、後半分に先頭車2両が並べられている。

クイーンビートルは速度を一気に落として台船の真横に並んだ。波に揺れながら車体が上下する様はまさに“海に浮かぶかもめ”だ。クイーンビートルと台船の距離はおよそ200m。車体に書かれた青柳俊彦社長の揮毫による「かもめ」の文字もはっきりと見える。「天候が悪いとここまで近づけなかったかもしれません」と、船上の係員が教えてくれた。

クイーンビートルは両舷から海上輸送の様子が見えるよう台船の右側、左側に移動しただけでなく、速度を上げたり落としたりすることで車両の前面や後部がはっきりと見えるようにするサービスぶり。乗客たちはおよそ1時間にわたって海上のスペクタクルを堪能した。15時少し前に再び博多港に到着。乗客は大満足の様子でタラップを降りていった。

現在はパナマ船籍のクイーンビートルだが、今春には日本船籍への変更が予定されており、国内定期航路への就航が可能になる。その意味では、今回のツアーはクイーンビートルにとっても今後に向けた絶好のPRとなったといってよい。

新幹線かもめは今後も製造され、完成した車両もおそらく海上輸送により車両基地に運ばれるはずだ。再び海上輸送見学ツアーが実施されるかどうかについては「何も決まっていない」(JR九州高速船)とのことだが、もし日本船籍の取得後に実施されるとしたら、そのメリットを活かしたさらに魅力あるツアーとなる可能性がある。

陸揚げ後も沿道には人だかり

海上輸送のスケジュールは順調に進み、新幹線車両を載せた台船は予定よりも早い8日10時頃には川棚港に到着していた。

深夜の路上を大型トレーラーに牽引されて進む「かもめ」(記者撮影)

予定どおり9日に陸揚げされた新幹線車両は、地元の園児らによる歓迎セレモニーで出迎えられた。そして、10日未明、11日未明の2回に分け3両ずつ、今度は陸路で車両基地に運ばれた。台車の代わりに専用タイヤを装着し、大型トレーラーが牽引する。

約25kmの輸送ルートもスケジュールも非公表だが、大きな新幹線車両が走れるルートは限られるうえ、陸送の様子を目撃した人がSNSで「○時○分に××交差点を通過した」といった情報を発信することもある。これらを手がかりに多くの住民や鉄道ファンが沿道で新幹線車両を待ち構えた。

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