(第32回)米国の国際収支でのサービス輸出の貢献

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 ところで、こうしたサービスの中には、無料のものが多い(その典型が、検索サービスやウェブメールである)。そしてこれらのサービスを提供している企業としては、圧倒的にアメリカ企業が多い。したがって、仮にこうしたサービスが有料のものであれば、アメリカのサービス収支の黒字はもっと多くなっているだろう。

検索やウェブメール自体が無料であるとしても、サービス提供者は何らかの利益を得ている。検索連動広告は「広告料」という形で収益を顕在化させているが、それ以外に、はっきりとは見えない利益も発生していると考えられる。たとえば、ウェブメールにおけるさまざまな実験的サービスが、将来の収益源に転化するといったことである。

こうしたことを考えると、革新的なIT関連サービスが将来のアメリカ経済に寄与する程度は、ここで見た数字だけでは推し量れない。特に、クラウドサービス(インターネットから供給されるさまざまなサービス)は、光通信網を介して、簡単に外国に輸出することができる。それは、将来の国際収支の姿を大きく変えていくだろう。

米国経済分析局(BEA, Table 6.1D. National Income Without Capital Consumption Adjustment by Industry )
米国経済分析局(BEA, Table 4.2.5. Exports and Imports of Goods and Services by Type of Product)


野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)


(週刊東洋経済2010年9月25日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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