日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪 債務残高だけに集中するのは大きな間違いだ

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こうした状況に対し、財務省はシンプルで、一見もっともらしい答えを出している。肥大化を続ける債務残高(対GDP比)を見よ。これが永遠に続くはずがない。強力な対策を講じなければ、ある日突然、投資家が一斉に日本国債を売却するのは避けられないだろう、と。

問題は、財務省が言及しているのは「総」債務残高であり、確かに1990年にはGDPの70%だったものが、2020年には237%にまで増加している(主に日本国債)。しかし、この数字には、ある政府機関が別の政府機関に対して負っている債務が含まれているため、意味がない。日本銀行のような政府機関が日本国債を捨てる兆しもない。

重要なのは「純」債務残高、つまり民間投資家に対して負っている債務であり、2013年に黒田東彦氏が日銀総裁に就任して以来、実際には縮小している。デフレ対策の名目で、日銀は日本国債を大量に購入した。

デフレ脱却の音頭のもと、日銀は国債の約半分、GDPの94%に相当する額を購入した。これは、2012年から18%の増加だ。一方で、個人投資家などを中心とする日銀以外の者が保有する日本国債は、2012年にはGDPの145%だったのが、現在は103%にまで落ち込んでいる。

加えて、国債危機の真の引き金となるのは、債務残高そのものではない。政府が利子を払えなくなったときに起こるのだ。日本にはそのような問題はない。2021年には、日銀がマイナス金利政策を実施したため、利払いはGDPのわずか0.4%にまで減少した。個人投資家への負債額と利払い額の両方が今よりはるかに大きかったときには日本は危機に陥らなかったのに、なぜ今になって危機に陥るというのか。

「低金利は永遠に続かない」は本当か

財務省の答えはこうだ。低金利は永遠には続かない。危機が訪れるのは、必然的に金利が上昇したときである、と。これももっともらしく聞こえるが、日本の過去に即していない。日銀は自由にインフレを起こせないことを証明したが、これまで四半世紀以上にわたって行ってきたように、超低金利を維持することはできる。

日本は世界から借金する必要がないので、金利をコントロールすることができる。はたして、日銀は、必要に応じて市中に資金を流し続ける代わりに、わざわざ金融の大混乱を招くだろうか?

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