津賀パナソニック、反転攻勢は本物か 赤字脱出という「光」に潜む「影」
スイッチやセンサーなど細かい部品まで含めれば、パナソニックは確かに、車載部品事業で幅広いラインナップを持っている。ただし、カーナビやリチウムイオン電池を除けば、多くは「ティア2(二次サプライヤー)」以下の下請けにとどまる。スマホ全盛のご時世、カーナビ市場が縮小するのは明らかで、「ティア1(一次サプライヤー)」としての地位を確固たるものにするには別のアプローチが必要だ。
先進運転支援システムへ参入し、先行メーカーを猛追する――。その意気込みは買うべきだが、敵ははるかかなたを走る。老舗の車載部品メーカーはもちろんのこと、電機出身の日立製作所はスバル(富士重工業)に運転支援システム「アイサイト」を供給し、信頼を勝ち得た。買収や提携で中核部品をそろえ、チーム日立も作り上げた。パナソニックはこれから買収を仕掛けていこうという段階だ。
業績回復で社内の雰囲気は明るくなった。だが、「光」が強ければまた「影」も濃くなりがちだ。
役員人事に灯る黄信号
大胆に実施してきた役員人事には黄信号が灯っている。津賀社長は20人超の役員を退任させ、これまで事業経験が少なかった幹部を何人も引き上げた。新陣営を見渡してみれば、AV機器部門の出身・経験者や、津賀社長との仕事仲間だった者が目立つ。
取り込まれた三洋電機は切り売りされ、「生き残った」はずの三洋出身社員はいまだにパナソニック出身社員より2割低い給与に甘んじている。パナソニック電工出身の役員が重用される一方、三洋出身の役員はゼロになった。リチウムイオン電池で貢献してきた技術のキーマン達も、ライバルの韓国サムスンSDIなどに転出してしまった。朝礼で流れるパナソニックの社歌をうつむいて聴く彼らの胸中はいかばかりか。短期的な業績回復は、こうした問題を解決するすべにはならない。
巨大企業であるだけに、事業の種はたくさんあるだろう。芽が出るのはこれからだ。社内外に抱える問題を解決しながら、まだまだ厳しい道のりが続きそうだ。ちなみに、10兆円構想のうち、かつて稼ぎ頭だった家電の比率は2割。パナソニックの業績が今後本格的に回復したとて、もう「ニッポンの家電復活」とはいえない。
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