今こそ中央銀行総裁を信頼すべき時である--ロバート・J・シラー 米エール大学経済学部教授
ブッシュ大統領の過ちと功績
ブッシュ大統領は00年の大統領選挙で勝利し、03年に『バロンズ』誌のコラムニストのアラン・アベルソン氏が「閣僚で最も切れ味が鈍い」と評したジョン・スノー氏を財務長官に指名した。同長官は大統領に恩義を感じ、金融危機が勃発する直前の06年に辞任するまで、大統領の政策を徹底して支持し続けた。新金融改革法の下では、スノー氏のような人物が米国経済の安定を図る責任を担うことになるのだ。
04年の大統領選でブッシュ大統領が有権者に訴えた政策の一つが、“オーナーシップ社会”だった。大統領は、「経済が発展するには、人々が自分の行動に責任を持つことを学ぶ必要がある。持ち家促進政策はこうした思想を植え付けるものだ」と主張した。有権者にも、住宅価値を上昇させる政策は望ましいものであるように思えた。
スノー長官は大統領の主張を繰り返し、03年に「アメリカ経済のバネは巻かれて、動き始める」とはやし立てた。2年後、株式市場と住宅市場がバブルの絶頂に近づいたとき、彼は「経済が好ましい、持続的な過程にあるのは喜ばしい」と宣言した。
一方、ブッシュ大統領の功績は、06年にベン・バーナンキ・プリンストン大学教授をFRB議長に登用したことだ。同議長は、FRBの独立性を尊重するという長年の伝統によって政治的圧力から守られてきた。高名な経済学者を議長に選んだのは、第一級の人物を議長に指名すべきだという国民の期待に大統領が応えたからだ。
同様の問題は他の国でも起きている。03年にオーストラリアのケン・ヘンリー財務長官は“住宅バブル”について警鐘を鳴らしたが、すぐに発言を撤回している。同長官は今年初めにも住宅バブルを沈静化させるために新税制を提案したが、いまだに政府は実施していない。