今こそ中央銀行総裁を信頼すべき時である--ロバート・J・シラー 米エール大学経済学部教授

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 この数十年間、多くの国の中央銀行総裁は政治的圧力からの独立を勝ち取ってきた。現在、多くの国の国民は、中央銀行総裁は政治家の干渉を排して職責を全うすることが許されているのを理解している。中央銀行総裁とは、長期的に賢明な政策を実行するために戦う、思慮深い人間であるという伝統が存在する。だからこそ中央銀行総裁は、政治的な困難なくして、正しい政策を実行することができるのだ。

世界の中央銀行は危機を予測できず、危機緩和のための対策を講じなかったが、危機発生後、国際的な協調に基づき断固かつ精力的に対応した。これは政治からの独立という伝統と中央銀行総裁の間で培われてきた協調によって促進されたものだ。

金融危機はマクロプルーデンスに関する規制の重要さを浮き彫りにした。中央銀行総裁は金融の安定性を判断するに完璧な人物ではないが、金融安定化を実現するために政治的、制度的に最も優れた地位にいる人たちなのである。

(週刊東洋経済2010年8月28日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

Robert J.Shiller
1946年生まれ。ミシガン大学卒業後、マサチューセッツ工科大学で経済学博士号取得。株式市場の研究で知られ、2000年出版の『根拠なき熱狂』は世界的ベストセラーになった。ジョージ・A・アカロフとの共著に『アニマルスピリット』がある。

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