まず野菜は世界各国から輸入される。野菜の原産地を見られるQRコードがパッケージに記載されている商品や、メーカーのホームページで公開している商品もある。
「基本的に、メーカーは値段が安ければ世界中どこからでも集めてきます。だいたい15カ国ぐらいだが、中国産もある。となると気になるのは残留農薬のリスク。今のところ、輸入時の検査で違反はないが、何か問題が起きたときに、どの国のどの野菜が原因だったのか追跡できるのか不安が残る」
それらの野菜を加熱して6分の1の体積に濃縮。ケチャップのようなどろどろの“濃縮ペースト”を冷凍して、日本に輸入する。体積が6分の1だから、運賃も6分の1になるというわけだ。
この“濃縮ペースト”に水を加えて元に戻したものを「濃縮還元」と呼ぶ。国内で戻せば「国内製造品」と表示していい。
野菜ジュースのパッケージに「濃縮還元」「国内製造品」と書いてあったら、消費者は「安心、安全。体にもよさそう」と思うだろう。
だが、「この方法だと、香りはもちろん、ほとんどの栄養素が失われてしまう。食物繊維は飲みにくくなるので、あらかじめ取り除いている。メーカーによっては香料やビタミンC、ミネラル、カルシウムなどの食品添加物で補っています」。
安全性に疑問のある香料も、一括表示!
この香料がくせものだ。化学的に合成された香料は3200以上あり、それらを組み合わせて作る。たとえば、イチゴの香料なら、酪酸エチル、乳酸エチルアルデヒド、リナロール、アセトフィノン、アルデヒドなど20種類以上を混ぜて、天然に近い香りを作る。「フルーツ飲料系のみならず、野菜ジュース、缶コーヒー、お茶に至るまで、さまざまなドリンクに香料は使われている。作れない香りはない」と、“食品添加物の神様”と呼ばれた安部さんは断言する。
問題は、メーカーがどんな香料をどれだけ使っているのか、消費者に知る術がないことだ。何百種類使っても「原材料名」には「香料」の一括表示でOKなのである。
これがもし上記のような合成香料の名前がずらずら表示されていたら、消費者は買うのをためらうのではないだろうか。中には安全性に問題のある香料もあるが、一括表示では避けようがない。
したがって、「香料」の表示があるドリンクはすべて買うべきでないということになる。しかし、多くのドリンクに香料が使われているからやっかいだ。
一括表示が許されているものは、ほかに「調味料」「乳化剤」「pH調整剤」「酸味料」「苦味料」など14種類ある。「それを隠れみのにして、メーカーが何をどれだけ入れていることか。メーカーにとっては非常に便利な表示です」と明かす。
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