「軽自動車のEV化」がいまいちピンとこない理由 新型アルトに乗って案じた「軽EVの行方」

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新型アルトでもベストセラーのN-BOXでも、軽自動車の商品開発の肝は、徹底した市場調査により消費者や販売店の生の声を拾い上げることにある。「生活者のためのクルマ」という概念が、軽自動車の本質だからだ。

そのため軽自動車メーカー各社は今、「軽EVの在り方」について、大いに悩んでいる。各方面との意見交換を進める中で、筆者はそう感じている。

本質的には、EVはガソリン車やディーゼル車の代替ではない。地球環境という最重要課題において、EVは社会におけるクルマの在り方そのものを問う存在だといえる。

日産が2019年の東京モーターショーで公開した、軽EVの「IMkコンセプト」(写真:日産自動車)

直近では、グローバルでESG投資という嵐が吹き荒れて、政治主導でバッテリーEV(BEV)シフトが急激に進み、また富裕層がプレミアムEVを先物買いしている。そして、庶民はそうしたEVシフトの行方を遠目で見ているような状況にある。

だから「生活者のためのクルマ」である軽自動車のEV化といわれても、説得力に欠けるのだろう。国が言う、「2035年までに軽自動車を含む国内新車販売100%電動化」については、スズキが導入しているマイルドハイブリッドの需要拡大が見込まれる。

大事なのは「電動化」ではなく「社会をどう変えるか」

ダイハツは「ロッキー」(およびトヨタ「ライズ」)に新搭載した、エンジンを発電機として使うシリーズハイブリッドをできるだけ早期に軽自動車にも導入する意向がある。そうなれば当然、日産(および三菱)は軽e-POWERで対抗してくるだろう。

ダイハツがトヨタの技術や部材を参考に開発したシリーズハイブリッドユニットの技術展示(筆者撮影)

そのうえで、日産と三菱がどこまで軽EV普及促進を推し進められるのか。また、気になるのは、「2040年にグローバルで新車の100%をEV/FCEV(燃料電池車)にする」を宣言したホンダの出方だ。

いずれにしても、2030年代になるとEV化を主体として、国や日本自動車業界全体における“軽自動車の車両規定の意義”に関する本格的な議論が始まることだろう。

その際、忘れてはならないのは、「どのようなパワートレインを採用する箱物なのか」というハードウェア優先の議論ではなく、「社会をどう変えていくべきか」という視点での「未来の生活者のための移動方法」を議論の主体とすることだ。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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