その女性もNECで働いており、電車を降りた後も会社までは一緒に歩いた。
一緒に歩いたといっても、声をかけるわけでもなく、ただ後ろから見惚れていただけだが、楽しい気持ちになった。
「そうして半年くらい経ったら、足が治ったんです。具体的に炎症の数値が下がりました。その後はステロイド剤など強い薬を飲む必要もなくなりました。やっぱり楽しく歩くのって大事なんですね。
足の奇病を経て、心からいちばん大事なのは健康だって思い知ったんですね。お金や地位も大事ですけど、まずは自分が普通に生きていければそれでいいって。
『この年齢だから、これくらいは稼がないと』
とか
『これくらいは売れないとダメだ』
とかはあまり考えなくなりました。それはハングリー精神が足りないということかもしれませんが、それがとりもなおさず今も芸人を続けていられる秘訣だと思います」
役者の世界に戻る
冷蔵庫マンさんは30歳で役者の世界に戻ろうと思った。
ただ、30歳を超えた役者に対して、業界は冷たかった。片っ端からオーディションを受けたがすべてダメだった。
しかたがなく野田にある小さな劇団に参加した。そこでミュージシャンたちと知り合った。
「彼らから、『ワハハ本舗の佐藤正宏座長が素人ダンサーズというのを募集してるから、行ってみたら?』と言われました」
当時すでにワハハ本舗はとても人気がある事務所だった。佐藤正宏座長の個人公演に演劇経験のある冷蔵庫マンさんは抜擢されて、かなり長いセリフのある役をもらった。
「僕が演じたら、お客さん全員が笑うんですよ。今でもその場の幸せな空気を思い出します。もちろん僕は演出されたとおりに演じただけだったんですけど、それでも感動しました。
ここに入りたいと思い、演出をしていたワハハ本舗の社長にお願いしました」
当時はオホホ商会という若手の団員で構成された組織があり、冷蔵庫マンさんはそこへ入ることになった。
「すでに30歳でしたから、よく入れてくれたと思います。
しばらくは役者の仕事のみをすることになりました。テレビやCMのワンシーンで登場することが多かったですね」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら