ふるさと納税「強欲ポータルサイト」に高まる鬱憤 過熱するPR合戦に"流出自治体"や関係者は困惑
ふるさと納税では自己負担の2000円を除き、一定の上限額(住民税の20%)までは、寄付した金額の全額が翌年の住民税から控除される。たとえば住民税を年間50万円納めている場合、10万円までの寄付額は、翌年の住民税からほぼすべて減額される。寄付者は2000円の自己負担のみで豪華な返礼品を受け取れるというわけだ。
他方で寄付者が居住する自治体では、本来入るはずの住民税が失われることになる。税収が流出した自治体に住み、ふるさと納税を利用しない人たちは、行政サービスの悪化という形で不利益を被ることにつながりかねない。
税収を失うのは、人口が多く所得水準の高い都市部の自治体が中心だ。こうした自治体からは、「真剣に流出対策を議論しているのに、あのテレビCMを見ると腹が立つ」「制度の趣旨にのっとって運営するべきポータルサイトが、キャッシュバックなどでお得をあおるのはいかがなものか」(首都圏にある複数の自治体職員)などと怨嗟の声が聞こえてくる。
ふるさと納税の制度の趣旨は「お世話になった自治体への恩返し」。本来の目的からかけ離れ、目先の集客のため"お得感"をうたった販促を打ち続ける状況に、ポータルサイトの社内ですら、前出の社員のように罪悪感にさいなまれている人は存在する。
規制の必要性にはサイトで温度差
税収が流出する自治体やふるさと納税を利用しない人の不満が一段と高まれば、2019年に返礼品競争が法改正で制限されたように、ポータルサイト側への規制措置が講じられることも考えられる。しかし規制をめぐっては、ポータルサイトの間で温度差がある。
「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクは、ふるさと納税の創設間もない頃から、総務省と連携して制度の普及を推進してきた。ふるさと納税経由の手数料収入が収益柱でもあり、制度そのものの存続や健全化に対する意識はひときわ高い。そのため過剰な還元策や広告に対し、業界内で規制を設けることには賛成のスタンスだ。
一方、ソフトバンクグループ傘下の「さとふる」は、「課題があれば検討する。手段の1つとして自主規制という考え方もある」(青木大介副社長)とのコメントにとどめた。「ふるなび」は、「今は制度が広く認知されることが大事。最適な制度設計とも思わないが、規制を設ける理由はない」(運営するアイモバイルの文田康博取締役)と消極的だ。
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