ふるさと納税「強欲ポータルサイト」に高まる鬱憤 過熱するPR合戦に"流出自治体"や関係者は困惑
ポータルサイトが過度なPR合戦から抜け出せない背景には、利用者のコスパ重視の傾向が年々強まっていることもある。「以前は高所得者の利用が多く、制度の趣旨に賛同する使われ方も多かった。今は中所得者層の利用が増え、とにかく"お得なもの"を求める傾向が強い」。あるポータルサイトの関係者はそう指摘する。
ポータルサイト各社は表面上、「返礼品をきっかけに、その地域の魅力に気づくことができる」とふるさと納税を利用する意義を強調する。しかし一般のECサイトのように、商品ジャンル別の人気ランキングなどで返礼品を並べ、欲しいものを選ばせる仕掛けのサイトからは、そうした意図はあまり伝わらない。
実際にポータルサイトからふるさと納税を利用した寄付者は「どこの自治体かわからないが、家電や肉をもらった」(20代の男性)と話す。寄付を受け入れる自治体でも、「あくまでお礼の品として送っているのに、商品を買った客のような態度でクレームの電話をかけてくる寄付者がいる」と困惑気味に打ち明ける職員がいた。
「お得感」から脱するための見直しが急務
「お得感」ばかりが先行する、今のふるさと納税。都市部の自治体も、税収の一部を地方に還流することに異を唱えているわけではない。不満の矛先は、自分たちの利益ばかりを追求するポータルサイトやその利用者の姿勢と、それを誘引する制度設計にある。
民間企業である以上、ポータルサイト事業者が自社の集客を最大化しようとするのは当然だろう。とはいえポイント還元やテレビCMなどを「やったもん勝ち」状態の現状は、利用者のコスパ重視の志向を増幅させる負のスパイラルに陥っている。サイトの収益が何によって成り立っているかを振り返り、制度本来の趣旨に沿った最適な訴求方法を問い直すことは必要だ。
現状を打開するには、サイト側への規制だけでなく、税金の控除額自体の見直しを迫られる可能性もある。
全国20の政令指定都市の市長で構成する指定都市市長会は10月、ふるさと納税制度の見直しなどを訴えた税制改正要望事項を国に提出した。現在は所得にかかわらず住民税の20%まで控除されるため、所得が増えるほどふるさと納税を利用できる金額は青天井に伸びていく仕組みだが、「最大10万円まで」といった上限を設けることを要求している。
東京23区の特別区長会も総務相に対し、20%となっている住民税の控除割合を10%に引き下げることなどを再三求めている。
地方の自治体からすれば、ふるさと納税は工夫次第で税収を増やせる貴重な仕組みでもある。制度を存続させるためには、「得をする人」「損をする人」の断絶を生まない制度のあり方を検討すべき局面にさしかかっている。
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