中国のバイオ製薬会社「香港上場中止」の背景 沃森生物技術、肺炎ワクチンの輸出拡大に注力

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沃森生物技術は、香港上場を中止しても「業績や資金繰りに重大な影響はない」と説明している(写真は同社ウェブサイトより)

中国のバイオ製薬会社の沃森生物技術(ウォルバックス・バイオテクノロジー)は12月10日、手続きを進めていた香港証券取引所への上場計画を中止し、提出済みの上場申請書を撤回すると発表した。

その理由について沃森生物技術は、「最近の株式市場の環境変化を受けて、自社の経営状況と今後の事業計画を総合的に考慮した結果だ」と説明。同社によれば目下の経営状況は堅調であり、香港上場を中止しても「業績や資金繰りに重大な影響はない」としている。

香港市場ではこのところ、中国の製薬会社がIPO(新規株式公開)を実施した直後に、株価が公募価格を下回る「公募割れ」が相次いでいる。例えば2021年12月10日には、北海康成製薬(カンブリッジ・ファーマシューティカルズ)、凱莱英医薬集団(アシムケム・ラボラトリーズ)、固生堂控股(グーシェンタン・ホールディングス)の3社が同時に上場したが、初日の取引で公募割れを免れたのは固生堂控股だけだった。

ファイザーの独占市場に風穴

なお、沃森生物技術は上場中止の発表と同じ日、「13価肺炎球菌ワクチン」の生産能力増強に6億9500万元(約124億円)を投じる計画を明らかにした。子会社の敷地内に建屋を新築して生産設備を増設し、同ワクチンの輸出需要(の拡大)に備える。

13価肺炎球菌ワクチンは、沃森生物技術が近年発売した重要な医薬品の1つだ。中国メーカーが開発した同種のワクチンとして初めて、2019年12月31日に中国国家食品薬品監督管理局から製造販売の承認を獲得。それ以前は、中国国内で承認済みの13価肺炎球菌ワクチンはアメリカの製薬大手ファイザーの「プレベナー13」だけだった。

本記事は「財新」の提供記事です

沃森生物技術のワクチンは、中国市場でのファイザーの独占状態に風穴を開け、シェアを急速に拡大している。13価肺炎球菌ワクチンは海外市場の需要も巨大であり、プレベナー13の2020年のグローバル売上高は約58億5000万ドル(約6632億円)に上る。沃森生物技術が海外市場を開拓し、輸出を伸ばす余地は非常に大きい。

(財新記者:王礼鈞)
※原文の配信は12月13日

財新 Biz&Tech

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