コロナ政局で露呈した日本政治「統治不全」の深刻 岸田首相「新しい資本主義」に決定的に欠けたもの

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野党はどうだったか。立憲民主党は、菅政権の混迷もあって党勢拡大、場合によっては政権交代の好機と期待した。

ところが、菅首相の退陣と後継・岸田首相の誕生で当てが外れた。総選挙で立憲は共産党との「限定的な閣外協力」を打ち出し、多くの選挙区で野党の候補者を立憲に一本化。共産党は多くの立候補予定者を取り下げた。政策面で立憲は「分配なくして成長なし」と主張。富裕層への増税と低所得層への分配を主張した。

選挙戦で立憲の訴えは有権者に響かず、議席を減らした。共産党も12議席から10議席に退潮した。①中国が東アジアで台頭し、軍事的な脅威となっている中で、日米安保の廃棄を唱える共産党の主張に対する理解が広がらなかった②「分配」に力点を置いた立憲の訴えが、将来展望を期待する若者らにとっては説得力を欠いた――といった理由が考えられる。

維新は全国レベルの政策と組織作りが課題

これに対して、日本維新の会は11議席から41議席(選挙区16、比例区25)に躍進。選挙戦で「行政改革」や「規制緩和」を唱えたことが、都市部のサラリーマン層などの支持を集めたとみられている。

ただ、維新の勢力は近畿圏が中心(選挙区16人、比例区10人)となっており、全国的な広がりはない。今後、全国レベルの政策を打ち出し、組織づくりが進められるかどうかが課題となっている。

2022年は、年明けに通常国会が召集され、150日間の論戦が続く。その先には7月の参院選が控える。オミクロン株の感染拡大によって景気に陰りが生じた場合でも、国会で当初予算案を審議中の1~3月には新たな景気対策を打つのは難しい。景気悪化のまま参院選を迎えれば、岸田政権にとっては強い逆風となる。

そうした当面の経済対策に加えて、コロナ禍で表面化した一連の統治不全をどう克服するのか。医療制度、貧困対策、デジタル化など抜本的な制度改革に乗り出さなければならない。政党、政治家がどこまで本質的な改革プランを打ち出せるかどうか。各党は参院選を改革案の競い合いの場としなければならない。

星 浩 政治ジャーナリスト

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ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)など。

 

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