小林一茶に学ぶ「生きづらさ」飄々とやりすごす術 「親ガチャ」「縁故社会」…江戸時代も辛かった!

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意外に思われるかもしれませんが、江戸時代の俳句界も実力主義でした。

一茶は「葛飾派」という一派に所属して俳句を学びました。いまでいう俳句結社です。「葛飾派」はリーダーの溝口素丸をはじめとして、旗本など武家の者が多く、農家出身の一茶は肩身が狭かったことが想像されます。

しかし、そうした身分の差に関係なく、一茶は派内でめきめきと頭角をあらわし、長年にわたる諸国行脚の武者修行ののち、37歳で俳人として独り立ちを許されます。

俳句への情熱とそれに伴う実力さえあれば、身分は関係ありませんでした。

実力主義の風通しのよさがあったことで、一茶は「親ガチャ」の外れを乗り越え、底辺から浮上することができたのです。

「コネとカネ」が優先される社会の閉塞感

ひるがえって、現代では格差の拡大と固定化が危惧されています。コロナ禍を経て、そうした状況が、さらに進んでいるように見えます。

とりわけ非正規雇用労働者への搾取は深刻です。新卒時に就職できなかった氷河期世代の中には、やむにやまれず非正規雇用に就いている人が多くいます。努力をしても賃金は上がらず、正社員に取り立てられることもなく、40代を迎えても結婚やマイホームを持つことが難しい。一茶の時代の奉公人よりも酷い扱いです。非正規雇用労働者の多くは、都合のいい労働力として搾取され、格差が固定されてしまっています。

いっぽうでヒエラルキーのトップでは、安倍政権以降、縁故主義が跋扈しています。効率性や実力が優先されるのではなく、権力者とのコネとカネがものをいう「縁故資本主義」になっていると指摘されています。

「日大背任事件」はその象徴的な事件でした。

 日の本や金も子をうむ御代の春

金が金を生む、拝金主義の世相を一茶は皮肉っていますが、現代の日本にもぴったり当てはまるのではないでしょうか。

日大付属病院の建て替え工事を巡る背任容疑で逮捕された医療法人「錦秀会」前理事長・籔本雅巳被告は安倍元首相とは互いの父親の代からから交友があり、当人たちもゴルフ仲間で、いわゆるアベ友でした。つまり、日大背任事件が起きた根底には悪しき縁故主義があるのです。

コネとカネ。日本のトップで行われている、こうした悪しき縁故主義が庶民の「親ガチャ」の閉塞感や格差の拡大、固定化の遠因になっているのではないかと思うのです。

10月の衆議院選挙では、こうした政治の現状を変えたいと強く思いつつも、積極的に票を投じたいと思える立候補者や政党がなかったという人も多かったのではないでしょうか。そうした点では、わたしたちは「親ガチャ」ならぬ「政治ガチャ」に外れてしまったといえるかもしれません。

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