52歳で「朝日→ファーウェイ」に転職した男の活路 順風な会社員人生を送っていたが不祥事で一転

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「中国企業と日本企業ではKPI(業績評価指標)の考え方が全然違います。多くの日本企業は『言い訳をしたり手柄を自慢するのはみっともない』という価値観があるでしょうが、それは周囲が陰の努力を見て、察してくれるからです。ファーウェイでは自分が会社にどんな貢献をしたのか、わかるようにアピールしなければいけない。その環境はまだ慣れなくて、中国人の同僚にフォローしてもらっています」

一方、50代という年齢が転職のリスクやハンデになるとは思わないという。「新聞社の業績は右肩下がりでしたが、それでも世間で見れば給料は高かった。若い人から見たら50代なら逃げ切れるように見えるでしょう。しかしそれは定年が60歳だったら、の話です。65歳、70歳まで働く時代だと考えると、会社に居続けるほどリスクは高くなるし、あと20年あるなら、新しいことへの挑戦や、スキルを磨く時間は十分残っていると考えました」

中高年で転職するコツ

最近では、サントリーホールディングスの新浪剛史社長が9月に提唱した「45歳定年制」という言葉が、世間をにぎわせている。中高年での転職の注意点は何だろうか。

田島さんは、「培ったスキルを社外に伝えられるようにする」ことと、「早めの準備」を挙げた。どちらも、朝日新聞社の不祥事対応の教訓でもある。

「当時の朝日が社内の価値観に染まって、社会や社外との対話を軽視していたことは、第三者委員会の報告書でも『自社内部の危機に集中するあまり、外部環境を適切に識別する力を失っていった』と指摘されました。私、若いときは特ダネ記者で、何度も社会面トップの記事を書いたんですよ。でもその説明では社外に伝わらない。『外部への説明責任』を置き去りにしてはいけないと学び、自分のキャリアでも実践できるよう心掛けています」

田島さんはPRプランナーの資格取得の勉強を始めたとき、転職は考えていなかったという。だが、勉強している間にも希望退職の募集があり、「どのようなスキルがあれば、転職の強みになるか」を考えて英語学習にも着手した。2018年に受験したTOEICのスコアは845点、海外生活の経験はないがリスニングは満点だったという。これが外資系企業への応募に役立った。

「自分の強みやスキルを社外に評価してもらうのが転職活動で、わかりやすい形に変換したり、新しいスキルと掛け算して大きくしていく努力を続ければ、40~50代でも遅くないと思っています」。田島さんは、中高年での転職のコツをそう語った。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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