52歳で「朝日→ファーウェイ」に転職した男の活路 順風な会社員人生を送っていたが不祥事で一転
問題の検証が一区切りした2015年春、田島さんと広報部長は外部団体が実施する広報初心者向けの実務研修に参加した。参加者の多くは20~30代で、部長が最年長、田島さんがその次だった。
「社内と社外の真ん中に立って、対話するのが広報担当者の役割との説明に、基本すら理解していなかったと痛感しました」
広報・PRの基本的な知識から実践的なスキルまで体系的な知識を認定する「PRプランナー」という資格があることを知った。「広報部を立て直すためにも、1人くらいは資格を取っておいたほうがいい」と考えた田島さんは、資格取得に向け勉強を始めた。
「1次試験は難なくクリアできたけど、2次試験、3次試験は、独学では難しく、講座を受けて準備しました。毎日始業より1時間早く出社して、勉強時間を確保しました」
2016年3月にPRプランナーの資格を取得した田島さんは、企業やメディア向けの事業説明会を企画するなど、朝日新聞社の信頼回復に取り組む中で、「定年まで複数の部署を転々とするよりは、広報を軸にキャリアを再構築したい」と考えるようになった。
朝日新聞社は2014年の不祥事によって、多くの読者を失った。だが、それがなくても新聞業界は部数、広告収入ともに苦境が続いている。2010年代以降、マスコミ各社は人員整理に着手し、朝日新聞社も2019年末、45歳以上の社員を対象に希望退職者の募集に踏み切った。広報部からオリンピック・パラリンピックスポーツ戦略室の次長に異動していた田島さんは、迷わず転職活動を始め、広報責任者を探していたファーウェイ・ジャパンに応募した。
ファーウェイに転職
ファーウェイは2018年冬に副会長の孟晩舟氏がカナダで拘束され、安全保障上のリスクから5Gの参入で国際的に排除の動きが加速していた。だが、田島さんは「朝日新聞での記者経験、そしてうまくできなかった広報経験の反省を生かして、大変な状況にある企業の危機管理に関わりたいとの思いがありました。ファーウェイは情報を盗んでいるとの疑惑もありましたが、自分でいろいろ調べてその心配はないと判断しました。」と気にしなかった。
2020年春、田島さんは約30年間勤務した朝日新聞社を52歳で退社し、ファーウェイ・ジャパンの広報部長に転じた。今は中国人3人、日本人2人のチームで、日本メディアへの情報発信を行っている。田島さんは「伝統的な日本企業に長くいたから、次は全然違う環境でやってみたい」と、外資とスタートアップを選んで応募していたが、「今思えば甘かったです」とも苦笑する。
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