日本企業が知らない「物流」究極のアマゾン対抗策 価格決定権を牛耳られる前にできることがある

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インターネットの場合、データはパケットと呼ばれる通信単位に分解され、最適なルートを通って受信者に届き、もとのデータに復元される。

フィジカルインターネットの場合も、コンテナ標準化で荷姿を統一することなどにより効率性を上げ、さらに最適なルートを経て客先に荷物が届く。大量の荷物を自社の倉庫に集めてから自社が手配した車両で配送するのではなく、相互に乗り入れた物流網の中で最も効率的なルート上にある車両や施設を利用して荷物を運ぶ。

事業者ごとに物流網を築いている場合は災害時などに物流ルートが寸断しがちだが、相互に物流網が乗り入れているフィジカルインターネットの場合は、そうした災害時などの冗長性も備えているという。

各業界が抱えている課題を解決する

細かな定義による違いはいろいろとあるかもしれないが、実は次世代物流プラットフォームは、いわば「業界別フィジカルインターネット」とも言える。次世代物流プラットフォームは、フィジカルインターネットの概念とも連動しながら、各業界が抱えている課題を解決していくアプローチなのだ。

業界が一丸となって物流を改革していくためには、プラットフォームのサービスや機能を提供するパートナーとして、その業界外のプレーヤーも広く巻き込んでいくことが重要となる。なぜなら、業界内のプレーヤーだけで課題解決に取り組むと新しい視点が生まれず、従来の延長線上でしか発想できないためだ。

物流リソースの不足により製品が思いどおりに運べなくなることは、どの業界にとっても深刻な問題であり、その解決には大きな社会的意義がある。本来は、物流危機を解決するために、フィジカルインターネットの構想のように、業界を超えてすべてのプレーヤーを巻き込んでいくことが理想だが、一気にそこに向かうのは困難だ。

課題解決という意味では、すべてのプレーヤーを巻き込むよりも、業界別にアプローチしたほうがより効果的と言える。その理由は、物流以外の観点でも各業界には共通の課題があるからだ。それらをまとめて解決しようというのが業界別次世代物流プラットフォームだ。

物流はサプライチェーンのハブとなるため、各社が個別に持っているアセットをシェアすることで非稼働アセットの有効活用を図り、これにマッチングの機能を連携させて、フィジカルインターネットのコンセプトも実現させていくことを狙っている。

この改革をリードするためには、物流課題とともに各業界が抱えている課題の解決も重要となるため、物流企業だけでなくインダストリー側の企業もキープレーヤーとなってくる。

つまり、物流課題の解決だけがミッションではない。インダストリー側の意思が入ることによって業界課題と物流課題の両方を解決できることが最大の特徴であり、各プレーヤーがプラットフォームを利用する動機づけにもなる。

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