都営地下鉄からメトロへ交代、「くまでん」の主役 運行時間拡大やバスとの連携で利便性高める

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北熊本の車庫に休む。右から最新形式の元東京メトロ日比谷線03系の03形、元銀座線01系の01形 、そして入換車として命脈を保った「青ガエル」5101号(写真:久保田 敦)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2022年2月号「くまでん訪問記」を再構成した記事を掲載します。
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熊本電気鉄道は、熊本市街の藤崎宮前から北へ合志市の御代志まで9.7kmと、上熊本―北熊本間3.4kmの2線を持ち、JR鹿児島本線と豊肥本線の間のエリアに延びている。地元ではJR、市電に対し「電鉄」の名で通っているほか、かつては菊池まで延びていたので、土地の高齢者からは今でも「菊池電車」「菊電」の呼び名を聞く。その路線をたどりながら、興味深い話題を拾い集めてゆこう。

鐘の踏切音を聞き、酒屋の脇を走るワンマン電車

起点の藤崎宮前は、その名の通り熊本の総鎮守社、藤崎八旛宮の近傍にある。だが、市街中心地の水道町からは北に1kmほど離れている。ビルの中に隠れるような駅に入ると、2両でいっぱいの1線2面のホームに東京メトロからお輿入れした元日比谷線03系が停車していた。

九州産交が発売している「わくわく1dayパス」は熊本市電やバスと合わせた1日乗車券で、窓口で扱っている。熊本電鉄は中間部の堀川まで含まれる券が700円、須屋まで含まれる券が900円、熊本県ほぼ全域をカバーし熊本電鉄も全線乗車できる券は2000円と3種類がある。藤崎宮前〜御代志間は片道410円で、市電・バスも含めて乗り降りを繰り返すならば便利である。整理券方式のワンマン電車だが、全国共通のICカードも使えるようになっている。

御代志行き電車は30分間隔で出ており、日中は5分前ぐらいから、少ないながらも三々五々乗客が集まってくる。

発車して600m走ると道路端の併用軌道に差し掛かる。 カラー舗装に見えるがそうではなく、バラストを網袋に入れて敷き詰めてある (藤崎宮前ー黒髪町間、写真:久保田 敦)

運転士が乗り込み短くベルを鳴らすと、発車する。路地裏のような空間に踏み出す線路は、カンカンと正真正銘、鐘の音を響かせる踏切を横切り、やがて生活道路の道端に出て酒屋の軒や軽トラをかすめるように進む。舗装された併用軌道ではないが専用軌道とも言い難い名所で、S字のカーブを描いている。速度は時速20km程度だ。

古さひとしおの黒髪町駅からは少しだけ速度を上げ、北熊本へ向かう。今どきと思える木製の架線柱は曲線部分ではカントに合わせて平行四辺形に傾いている。ビームも木材で橋渡しといった様子は、昭和も30〜40年代の姿ではなかろうか。熊本城の外濠でもある坪井川沿いで上熊本線に寄り添うと北熊本。御代志行きと藤崎宮前行きが行き違い接続する上熊本線の電車も並ぶ。2面3線のホームに隣接して車両基地が広がる中枢の駅である。

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