都営地下鉄からメトロへ交代、「くまでん」の主役 運行時間拡大やバスとの連携で利便性高める

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その気運の中で、買い取って移設保存したいと申し出るグループもあったが、きわめて専門性が高いその移送費は想像以上のもので、経験のない業者に託すと強度的に冷房も積めなかった経年60年の超軽量車両は、車体自体が折れてしまう可能性もあった。ゆえに移設は断念された。

北熊本駅は2面3線の配線で藤崎宮前-御代志間の上下電車が行き違い、御代志行きホームの反対側には上熊本線の電車が待ち受ける(写真:久保田 敦)

そこで車籍を抜いた備品扱いで残すことになり、工場の入換牽引車となったのである。それまでの牽引車は1928年製の元広浜鉄道71号で、これも大事に管理され、2009年にはレストア工事を施したものの、さすがに経年90年で継続使用に不安が強まっていた。その代替の役割を果たす。車庫の一角で行う体験運転にも使用される。

一方、北熊本駅構内においては車両更新と並び、変電所の更新も大きな事業として挙がる。近年の災害の激甚化に鑑み、脇を流れる坪井川の氾濫による機能停止を避けるために大きく持ち上げて設置する計画だ。電車は危険が予測された段階で高い地点に回送できる。信号もいざとなれば昔の通票閉塞で乗り切れる。その場に固定され、移動が不可能な変電所がいちばんの課題とされたからだ。

国道3号の下にパークアンドライドの駐車場

北熊本を出るとほどなく県道とピタリと並行する。途中の行き違い駅、堀川では駅舎と駅前分の距離を開けるものの、単線1面の停留所は完全に道路に張り付く姿だ。往時に遡れば、菊池への街道沿いに線路が敷かれたとわかる。沿線はずっと家並みが途切れない。架線柱は相変わらず木製で、ときに傾いでいるが、線路はPC枕木化による軌道強化が進められている。木枕木と混在させつつ、徐々にPCの割合を高めている模様で、バラストもそれなりに厚い。藤崎宮前付近の併用軌道区間とは少々様子が異なる。

国道3号バイパスと交差する新須屋駅。高架道路の下にP&R用の駐車場が設けられているとともに階段で国道上と結ばれている(写真:久保田 敦)

新須屋で国道3号の高架橋と交差する。その高架下にパークアンドライド(P&R)の駐車場が用意されている。熊本電鉄は経営改善策として2008年に運賃改定を行ったが、利用者に負担を願う施策の一方で、以後、利便性を引き上げる施策にも取り組んだ。その1つがP&Rであり、ほかに北熊本・黒石・御代志駅に駐車場を設け、電車利用者が格安に利用できるようにした。3号線と直結する新須屋と、朝の通勤時に電車の始発駅として確実に座れる御代志は必然的に人気が高く、いずれも70台規模とされている(御代志は後述する区画整理事業のため今後は流動的)。

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