「4000例のコロナ死データ」で見えた死亡例の傾向 年齢や基礎疾患だけではなかった新たなリスク

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同制度では、寝たきりや認知症などで常時介護を必要とする状態(要介護)だったり、家事や身支度といった日常生活に支援が必要で、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援)だったりしたときに、介護予防や介護で、それぞれのサービスを受けることが可能だ。

要介護認定は、介護予防や介護サービスの必要度で判断される。

調査の結果、「要支援1」「要支援2」の死亡事例は、それぞれ96人と111人となり、段階的に増えていた。また、「要介護」は5段階に分けられ、1から5まで数字が増えるにつれて介護サービスの必要度が高くなるが、調査結果では「要介護1」の死亡者数は265人、「要介護2」は同322人に上った。さらに「要介護3」(312人)、「要介護4」(316人)、「要介護5」(273人)と高水準だった。

そこで、この調査結果をさらに詳しく分析して、年齢階級別の死亡事例の要介護の割合と、介護保険制度の要介護認定率を比較した。

要介護者の死亡者数が多いのは想定できた

要介護認定率は、介護保険事業状況報告(2019年9月末認定者数)と総務省統計局人口推計の同年10月1日の人口から算出した。同制度の要介護認定率が、75歳から79歳までが12.5%、80歳から84歳までが27.2%、85歳以上が60.6%となる一方、年齢階級別の死亡事例の要介護の割合は、それぞれ34%、45%、66%となり、総じて要介護認定率を上回った。

淑徳大学総合福祉学部(千葉市)の結城康博教授に調査結果を分析してもらうと、「高齢者のなかでも、特に85歳以上の生活環境などを踏まえると、要介護の人の死亡者数が多いのは想定できることだった。健康な70歳と要介護の85歳などとは、コロナ感染後の対応が食生活と病院へのアクセスの点で大きく違ってくる」と言う。

結城教授は、「要介護の人は体力も衰えているうえ、必要な栄養を摂取するのも困難になる。家族の介護者がいないことによる"家の介護力”の低下が指摘されており、要介護の85歳となれば、独居や老々介護のケースも出てくる。認知症の人や徘徊する人、さらには車いすの人も増えるので、自分で健康管理をする自助の力が低下している」と解説する。

その上で、結城教授は来るべき第6波に向けて、このように訴える。

「これまでのコロナ禍では、デイサービスと呼ばれる、施設に入所せず昼間に日帰りで利用できる通所介護サービスの利用控えがあったと聞く。その結果、あまり外に出ていかなくなり外部と遮断され、通院もしなくなり治療が遅れてしまうことがあった。第6波が本当に来るかはわからないが、要介護の人、さらには認知症の人を円滑に入院させる体制を整備することが大事になる」

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