五輪争い混戦「フィギュア」プロが見る勝負の境目 ついに開幕した五輪代表最終選考会の見どころ

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今シーズンのグランプリシリーズでは、羽生結弦選手が残念ながら試合を欠場していました。しかし、そのほかの若手選手たちが次々と台頭し、大活躍をみせています。

佐藤駿選手は昨年シニアデビューしたばかりですが、今シーズンはスケートアメリカでは4位、GPフランスでは銀メダルと大活躍をみせています。

私と佐藤選手との接点は、今年開催されたアイスショー「スターズ・オン・アイス」での共演、そして彼の今シーズンのプログラムの振り付けでした。アイスショーで初めて彼の演技を見たのですが、ジャンプのミスの少なさに大変驚きました。全公演をとおして見ていてもミスが少なく、確実性が高いジャンプができるところが彼の武器ですね。

また、振り付けたプログラムは最初に振り付けのレッスンを行ってから、現在も手直しをリモートで行っていますが、指導のたびに指摘した内容を改善し、成長している様子を感じています。高難易度の4回転フリップ、4回転ルッツを跳べるようになってきているだけでなく、スケーティングの質も上がってきています。全日本選手権の舞台でも、実力が発揮できれば五輪の選考にも食い込めるのではないかと期待しています。

世界トップと対等に戦える実力を示した鍵山優真選手

鍵山優真選手はシニアデビュー後、2021年の世界選手権では羽生選手やネイサン・チェン選手と対等に戦える実力を見せつけ、銀メダルを獲得しました。

『スケートと歩む人生』(KADOKAWA)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

そして今シーズンのGPイタリア、GPフランスでは優勝と、まさに「跳び出てきた」鍵山選手。実は彼のお父様であり、コーチである鍵山正和さんは私が選手時代を共に過ごし、何度も海外の大会に遠征してきました。そういうことから、彼の演技を見るときは少し個人的な気持ちが入ります。

正和さんとともに歩んできた彼が、精度の高い4回転ジャンプ、それだけでなく、ひと蹴りでグッと滑ることができる高度なスケーティング力を身につけるまでに成長したことを嬉しく思っています。そして、全日本選手権でも世界と対等に戦えるほどの実力を思う存分出し切ってほしいです。

シニアデビューしたばかりの若手選手だけでなく、やはり忘れてはいけないのが宇野昌磨選手です。

一昨年からステファン・ランビエールさんに師事し始めました。ランビエールさんは選手時代から、身体のバランスをしっかり整えるトレーニングに重きを置いていると記憶しています。それもあってか、指導の際にも基礎的なトレーニングを徹底しているのではないかと思いますし、実際、宇野選手の演技にそれが表れているのではないかと感じます。

1つのジャンプを見てみても、軸がぶれておらず、踏み切りや着氷の際の姿勢が美しいことが挙げられます。今シーズンの宇野選手はGPアメリカでの銀メダル、そしてNHK杯で優勝と躍進をとげてきました。

ランビエールさんと歩んできた日々の努力が、全日本選手権で結実することを期待しています。

佐藤 有香 プロフィギュアスケーター

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さとう ゆか / Yuka Sato

1973年東京都生まれ。フィギュアスケート選手で種目は女子シングル。フィギュアスケートのコーチをしていた佐藤信夫、久美子夫妻の間に生まれ、趣味でスケートを始める。ジュニアの頃から実績を残し、1994年のリレハンメルオリンピックでは5位入賞、同年の世界選手権では優勝し、伊藤みどり以来、日本人二人目の世界女王となった。その後、プロに転向し、プロフィギュア選手権等多くの大会で優勝。表現力に磨きをかけ、プロとしても評価されている。現在は日本国内外の選手のコーチや振付師として活躍中(写真:吉成大輔)。

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